2023/12/01

「隣人X -疑惑の彼女-」を観る

映画の日なので2本目に今日から公開の「隣人X -疑惑の彼女-」を観た。のだめとノゴーン・ベキ主演.....いや上野樹里、林遣都共演の静かなるSFドラマ。地球外生命体、惑星移民Xを受け入れた世界。人の姿をコピーし、社会に溶け込むXたち。そんなXに恐怖を覚える現実と未来を描いていく。

オープニングのタイトルテロップは原作同様「隣人X」でサブタイトルはない。監督のささやかな抵抗?配給元が付けたのかな?タイトルはシンプルなほうがSFっぽくていい。物語は派手さが無く心理描写が中心でXを巡る考察モノでもない。時にみせるVFXでSFだと再認識するが、Xとは現実社会に潜む様々な差別へのメタファーだと気づく。

記事のために上野樹里演じる柏木良子へ近づく雑誌記者=林遣都。 心を通わすうちに生まれる苦悩。そして記事を巡る騒動が二人にもたらすもの。もうひと組、野村周平と台湾出身のファン・ペイチャの二人の姿も含めて様々な視点で物語を追っていく。ひたむきなファン・ペイチャの演技と可愛さが良かった。

ちょっと雑と思える編集部分もあったが、終わってみればSFだしあの結末だからと思う。そんな中で良子とその父紀彦との関係が描かれていくが、もう少し早い場面で父親が出てきたほうが二人の絆を物語の中で活かす事ができた気も。ただ監督は前半でSF色、サスペンス色を強くしたかったのかもしれない。

そんな良子の父を演じた令和の名バイプレイヤーと呼ぶべき酒向芳の存在感がいい。
最初、無口で誰だか判らなかったけど、途中で彼だと気づいた。シリアスもコメディーもでき、今やドラマで見掛けぬ時はない。本作では髪の毛のせいもあるけど、何処かSFチックを彩っていた。母親役の原日出子共々、家族の物語でもあるのだな。

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「ナポレオン」を観る

今日は映画の日なのでリドリー・スコット監督最新作「ナポレオン」を観てきた。御年86歳ながら毎年のように新作を送り出す巨匠。近年玉石混交で当たり外れはあったものの、得意の歴史劇とあれば観るしかない。主演はオスカー俳優ホアキン・フェニックスを配した2時間半を超える大作。この映画もApple印である。

ナポレオンといえば「早野凡平」に下町の.....である「いいちこ」で知る世代。映画なら「バンデッドQ」や「ビルとテッドの時間旅行」に出てくる彼の姿が頭に浮かぶ。背が低くてエゴイストな男という印象。本作のナポレオンはそれらに近い面もあるが、史実に沿って彼の人間性に迫っていく。

約25年に渡り国を率いてきたナポレオン。ハリウッド産ゆえの英語劇への違和感も、国の外から冷静にその人生を描くためとすれば正しい。フランス革命後に軍より台頭し、国への思いがやがて自身の野望に転化されていく。彼を利用しようとする権力者たち。だが無双する皇帝もロシアとの戦いで大きな転機を迎える事になる。

僅かに感じる母親への思い、そして妻ジョセフィーヌとの関係性。その一途な愛情も後継者作りのために崩れていく。ジョセフィーヌは悪女な側面を見せるが、「MI:デッドレコニング」ヴァネッサ・カービーがとても魅力的に演じており、ナポレオンが翻弄されるのもよく分かる。彼と彼女の顛末が物語のもう一つの軸とした愛情劇となっている。

ただ主人公ナポレオンに対して「最後の決闘裁判」のような感情移入に至らなかった。知略を披露した前半に比べ、落日となる後半は衰え、大きな犠牲と私情の表れた史実がその気持ちを妨げる。それだけホアキンの名演と物語がよく出来ている表れ。そしてこの映画と今世界で起きている戦争の本質は何も変わっていない事に気づく。

沢山のエキストラを使った合戦シーンの迫力はさすがリドリー・スコット。これこそ映画館で観るべき。冒頭から断頭台が出てきてリドリー版「首」の様相も(でも「コントは始まらない」)、その血生臭さに何度も手で目を覆った。公称身長173cmのホアキンが撮影マジックでナポレオンを演じるのも見どころ。前半と後半のその姿の違いも比べて欲しい。騎乗した馬の体格も違うんだよね。

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2023/11/26

午前十時の映画祭「ブラック・レイン」を観る

今日は午前十時の映画祭「ブラック・レイン」を観てきた。1989年公開のアメリカ映画。松田優作は公開直後に急逝。もちろん当時、劇場で観たしあれから32年も経ったのか。この作品はレーザーディスクも持ってて、昔は音響のいいシーンをサラウンドでつまみ食いしたものだ。これまでも度々観ていたが、久々に劇場での再見も発見が多かった。

まず冒頭のニック。賭けバイクチェイスは何となく覚えていたが、家族の件やレストランへ至る流れは完全に抜けていた。やっぱ松田優作登場で完全に上書きされてしまったからね。でもバイクチェイスはクライマックスの伏線だったし、警察署前でのチャーリーとのやり取りは彼が駅ナカで煽られるシーンに繋がっている。この作品、あらゆるプロットに無駄が無い。

そして意外と優作一辺倒でなく群像劇だった事に驚く。出色は刑事部長を演じた「ザ・ガードマン」神山繁の貫禄。英語も自由に操り、ニックとチャーリーを驚かせるシーンが好き。また「英語はわかんねえんだよ。日本語で話せ」のガッツ石松の存在感と表情。前振りのニセ刑事役は裕也さんでニックを騙す件はセリフ共々印象に残る。裕也さんと共に行動するのは若き國村隼だしね。

爆発するクルマの前で見栄を切るように死んでいくホタテマンこと安岡力也、そこでちょっと早めに倒れたパチパチパンチの島木譲二。ニックを恐嚇する親分、若山富三郎の凄み。そして健さんにレイ・チャールズを歌わせる。皆、水を得た魚のように堂々とした演技、個性を発揮して面白い。リドリー・スコットの演出の良さもあるのだろうなと思う。

本作はSFで無いが「ブレードランナー」と兄弟作のように思う。監督初期の光と影、そしてスモッグを多用した様式美と集大成。80年代当時の大阪の夜景、街の風景と人々の表情。劇場効果もあって何もかも懐かしく、美しく映る。さらにうどんの件はセルフパロディー。箸の持ち方を直されるシーンも可笑しい。

日本人であれば国内ロケとセットシーンの違いに気づいてしまうが、圧倒的に面白さが上回る。ニックと健さん演じる松本の別れのシーン、二人の表情を見ると涙腺が緩む。ここだけは映画の中の物語を超えてしまっている。「ブラック・レイン」は単なるバディものに非ず、日本を描き国境を超えたマスターピース。その後作られた「ラストサムライ」やドラマ「TOKYO VICE」に繋がっていく。

今や健さんを始め、多くの出演者が故人となってしまった。でもこの作品の中では皆、生き生きとしている。映画とは永遠のタイムカプセル。NHK「アナザーストーリーズ」でのアンディ・ガルシアの回顧を聞くと優作(本人は病気を隠す辛さも)との交流、チームワークの良い撮影だったのだと思う。そんなところも伝わるこの作品が好きなんだよなぁ。

追伸.
本作はビデオレンタル全盛の頃。元々35mmで撮影され、劇場公開版は上下をマスキング。今でいうIMAX撮影サイズと通常版の違いに近い。購入したレーザーディスクはマスキング無しがトリミング版。でも今回改めて観た中でこの劇場公開版に違和感を思わなかったけどね。

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2023/11/23

北野武監督最新作「首」を観る

今日は北野武監督最新作「首」を観てきた。戦国時代を舞台にした自身の原作小説を映画化。織田信長と家臣、そして本能寺の変に至る人間模様を北野武独特の視点で描く。これまで製作過程から配信行きの騒ぎに劇場公開の危機が囁かれたが、無事今日から公開に至った。

最後に北野映画を劇場で観たのは「TAKESHIS'」が最後か。その後「アウトレイジ」等数作を撮った後、8年ぶりの本作。その背景、大きな違いはオフィス北野、森さんが離れた事。北野武最大の理解者不在に映画はどのように撮られたかが気になっていた。しかも冒頭、今回配給に北野映画初、東宝が絡んでいた事に驚く。

さてそんな「首」は物語の立ち上がりはシリアスにかつ、加瀬亮演じる狂気の信長のコントラスト、さらにタイトル通りの斬首シーンが衝撃的でそれ故のR15+。鮮やかさが際立った「座頭市」と異なり今回の殺陣は目を覆うシーンも多い。また「七人の侍」を意識したような雨中の合戦も印象に残る。

物語は登場人物とその人間関係が見えてきた後、本当に映画が始まった気がした。何故、たけし自ら秀吉を演じたのか。武と大森南朋、浅野忠信とのスリーショット。そして「コントが始まる」。大森、浅野とのやり取りが絶妙。北野映画としては当たり前なのだが、時代劇として何処まで許容するかがカギ。オレ的には何度も「思わず笑ってしまいました」

そもそもたけしのコントってテレビでもあまり観られなくなった。そんなたけしの2時間を超える壮大なコント(と勝手に思ってる)。北野組縁の演者に加え、特に本作最大の惑星、MVPであるキム兄が笑わせてくれる。この他配役の妙は観てのお楽しみ。六平さんや荒川良々も面白かったなぁ。でもオチはとても残酷なのだけど。

西島秀俊演じる明智光秀によるシリアスパートと人間関係のくだりは北野武節。これは戦国時代に舞台を移した「アウトレイジ」なんだな。明日のビバリー、この作品を松ちゃん(松村邦洋)がどうモノマネするかも楽しみ。KADOKAWAのアイツ(いつまでもiモード「昔の名前で出ています」)の名がエンドロールで鼻につくけど、興行的には成功してどうかこの作品が最後になりませんように。

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2023/11/15

「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を観る

今夜はレオナルド・ディカプリオ主演、マーティン・スコセッシ監督作品「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」を観てきた。上映は3時間を遥かに超える206分の長編。だが一切ダレる事なく主人公たちの行く末に引きつけられる犯罪劇。かつアメリカの暗部を描いた歴史劇でもある。

オセージ族たちの住むオクラホマの原野。そこである時、石油が掘り出される。オセージ族はその利権に飛びついた白人たちを受け入れ、彼らとの間に社会が生まれた町となった1920年代。鉱業権を持つオセージ族の人々が謎の死を遂げていく。同じ頃、伯父のヘイルに町へ呼び寄せられたアーネストはオセージ族の女性、モリーと出会う。

激動の20世紀初頭、突然生まれた富に湧く先住民=オセージと親しき隣人=白人。彼らの関係性、侵食されていく様が生々しい。この作品、犯罪劇の側面はスコセッシらしく手際のいい簡潔な演出。一方、単に事の成り行きを追うだけでなく、オセージ族の文化へのリスペクトが溢れ丁寧に描かれている。絶えず感じる脈動、血が通った作品と表すのが相応しい。

そんな言葉が浮かぶのも、スコセッシの演出だけでなく「ザ・バンド」のロビー・ロバートソンの音楽による部分も大きい。スコセッシに「ザ・バンド」といえば「ラスト・ワルツ」(1978年公開)。音楽を撮らせたら上手いスコセッシの原点。少なからず二人の関係性がこの作品の良さを押し上げているのだろう。映画を支えたロビー、エンドロールのテロップと共にR.I.P.

もちろんドラマ部分が素晴らしい。ディカプリオにデ・ニーロと一見非常に濃いキャスティング。だが二人のスターが中心にいる故、この長編は張り詰めた緊張が漂う。さらに助演陣も素晴らしく犯罪劇たるこの作品を支える。中でもモリーを演じるリリー・グラッドストーンが本当に良かった。事態に変化していく表情、観る側として感情移入せざる得ない。

物語は嫉妬と人種差別、表面的な文化の理解に白人たちの建前と本音が絶えず交錯する。判っていてもそこに取り込まれていくオセージたちが悲しい。この映画が彼らの痛みの全てとは言わないが、その断片だけでも知る事が重要。その存在意義は「福田村事件」に相通じる。しかも大企業Appleが製作してるんだよね。これもアメリカの懐の深さか。 今年観た劇映画の中でNo.1の作品だったと思う。

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2023/11/11

「ベイビーわるきゅーれ」を観る

今日は祝プライム会員特典化という事で「ベイビーわるきゅーれ」(2021年劇場公開)をAmazonプライムビデオで観た。女殺し屋バディのアクションコメディー。既に第2弾が劇場公開され、第3弾も撮影中という。第2弾「...2ベイビー」は第1作未見で脳内補完しながらの劇場鑑賞だったが、今回観て完全補完された。この第1作は本当に面白い。

主演の二人にとって「名刺となる作品」とメイキングで言っていたが、まさにその通り。髙石あかり、伊澤彩織共にこの作品をステップに知名度を高め、活躍を目にする場も多くなった。

監督自らによる脚本、大半は会話によるジャブの応酬。だがちゃんと決めるべきアクションで締める。「リベリオン」(ガンカタ)や「ジョン・ウィック」の影響はあっても嫌味になるどころか、魅入ってしまう。このバランスがこの作品の良いところ。それに伊澤さんは「ジョン・ウィック3」に逆輸入(?)されたしね。

また第2弾で描かれなかった二人の背景(二人の同居の経緯、まひろの社会不適合者ぶり等)は出てくるし、まずあのノリの原点はこの作品にある。「リーサル・ウェポン」も第1作無くして、次作の抜群のノリが生まれた事に同じ。ちさととまひろの会話、アクション同様のキレのあるやり取りが可笑しい。やっぱりこのシリーズは第1作から観るべきだな。

この作品の軽妙さに一役買うのが「日本統一」の本宮泰風。彼の役柄はこの作品の色から推して知るべし。実は第1作の面白さのスパイスは彼の役柄が担っている。その名演に何度笑った事か。そしてあの顛末。まぁ彼の前で親父ギャグは止めておいた方がいい。

2021年公開とあってあの曲を絡めたプロット、セリフが出てくるのも可笑しい。また彼ら殺し屋の世界に登場するキャラたちとの第一幕もあったり。ラバーガールはこの第1作でちゃんと二人で出ていたのだな。続く第3弾が今から楽しみ。せっかくまひろも免許を取った事だし、カーアクションあるかなぁ。九州ロケらしいしそこも期待。まだ観ていない方、追いつくなら今。「ベイビーわるきゅーれ」は大オススメ!


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2023/11/03

「SISU/シス 不死身の男」を観る

今日は映画をハシゴ。2本目に観たのは「SISU/シス 不死身の男」。世界一幸せな国フィンランドからやって来た戦争バイオレンスアクション。製作はソニー系ながら国内配給はハピネット。その理由は観て判るが、かなりニッチな作品ではある。だがハマればこれ程面白い(痛快な)作品は無い。また肉片飛び散る残酷描写のため、R15+に注意されたし。

第二次大戦末期、ナチスによる焦土作戦で痛手を受けたフィンランド。"ある荷物"をつけ狙い、老兵アアタビに近づくナチスドイツ小隊。しかしアアタビこそフィンランド最強孤高の特殊部隊兵だった。次々に倒されていくドイツ兵。そんな"ある荷物"を巡る攻防が繰り広げられていく。

簡単には死なない戦争版「ダイ・ハード」。冒頭のシーンで顔に体中傷だらけ、相当な強者と察する。見立ては年老いてヒゲ面のスティーブン・セガール(痩せてた頃の)。爆風で破片を体に受けようが自ら修復、まるでスタローンのランボー。同様、銃もナイフ裁きも素早い。最後はツルハシを持ち出し、"ある荷物"を取り返すために凄まじい意気込みをみせる。

かなり荒唐無稽なストーリーだが、それはそれ。とにかく無口ながら圧倒的なアアタビの存在感とアクションが見どころ。さすがは300人のソ連兵を殺した伝説の戦士。「孤独のグルメ」の五郎さんじゃないが「そんな手もあったのか!」、湖に追い込まれた彼の秘策にニヤリ。とにかく発想を超えた行動が凄い。

物語はドイツ兵の捕虜にされた女性たちが華を添える。ただし銃を片手に...。シリアスな部分もあるけれど、それを売りにする作品では無いです。ただ英語を話すドイツ兵だけがマイナス。どうやら世界配給に向けにセリフが再録されたよう(エンドロールで気づいたが確証は無いです)。あと予告篇でネタバレし過ぎだったかも。それでもオチも好きだし、面白い作品である事に変わりなし

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「ゴジラ-1.0」を観る(ネタバレ無し)

祝日休みという事で今日から劇場公開の「ゴジラ-1.0」を観てきた。シリーズ37作目となる本作の監督は「三丁目の夕日」シリーズの山崎貴(兼脚本、VFX)が務める。第二次大戦終戦の直後の日本を舞台にしたゴジラ作品。歴史に沿うような第一作のリメイク的な側面を持つ。

おそらく多くの人が「シン・ゴジラ」と比較せずにいられまい。東宝製作だし、キモのVFXを担当するのも白組で同じ。違いはシェフ(監督)次第で2作のアプローチはいくつか異なる。まず「ゴジラ-1.0」の時代を戦後に置いたところ。山崎監督は「三丁目」シリーズで高度経済成長期、「永遠の0」等で戦時下を描いており、経験をもって手腕を発揮し易い背景がある。

その上顕著なのが映像へのアプローチ。特撮回帰の「シン・ゴジラ」に対し、「ゴジラ-1.0」はビジュアルそのものの面白さ。本作で特撮特有の下からの煽り画はあまり無いし、ヤシオリ作戦のような懐古的な映像も無い。ただ大画面向きの映像作りは共通するところ。しかも本作の情景、艦船にリアルさがあって引きこまれる。

またシミュレーション要素の強かった「シン・ゴジラ」に比べ、人間ドラマに重心を置いている。ビジュアルとドラマの両立が「ゴジラ-1.0」の目指すところと感じた。主人公の成長を通して戦争の傷跡を乗り越えていく姿が描かれる。ワダツミ作戦、主人公の取る手段に一抹の不安はあったが娯楽作らしい着地。テーマの一つであろう、マイナスから乗り越えていくのが大事だから。

結論、2作の優劣は完全に好みの世界、甲乙つけ難い。ドラマパートは良かったし、セリフの端々に今の日本の在り方への批判、第一作同様に反戦の意味が込められている。シリアス寄りの物語も佐々木蔵之介と山田裕貴らの演技でバランス。シン・ゴジラのキャッチフレーズに倣えば、今回はニッポン(民間)VSゴジラなんだな。 「らんまん」とは違った神木、浜辺コンビを見る事ができる。もちろん必見はゴジラ、伊福部昭作曲のテーマが流れると総毛立つ。そんなゴジラバースの一つとして観てはどうだろうか。

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2023/10/29

「レオン 完全版」を観る

今日は限定リバイバル上映となった「レオン 完全版」を観てきた。1994年公開(日本公開はその翌年)、フランスのリュック・ベッソン監督ハリウッド進出作品。盟友ジャン・レノを主演に迎えた"掃除人"と呼ばれる殺し屋と少女の物語。少女マチルダは当時13才のナタリー・ポートマンが、敵役ノーマンをゲイリー・オールドマンが務める。

実は本作を未見。録画済であったものの、どうも観るキッカケが無かった。ベッソンが撮った「ニキータ」は公開当時観ていたのに。そんな自分に今回のリバイバル上映はありがたい。大画面のホームシアターもいいが(実家にだし、所帯持ってからはご無沙汰)、やはり劇場鑑賞こそ至高。特に「レオン 完全版」は全てが素晴らしい。133分間その物語に釘付けとなった。

まずオールドマン演じるノーマン登場における流れに食い入る。美と相反する殺戮。しかもノーマンの本職が...既に物語上、主人公の顛末は袋小路にあり、悲劇を予感させる。だがそれを忘れさせるかのようにレオンとマチルダの交流が始まる。時に笑わせ、愛くるしいやり取り。マチルダにとっては初恋と思しき想い、レオンには守るべき相手に変わっていく。

そんな物語も彼らの名演があってのもの。どこを切り取っても名場面。例えば屋上からの狙撃シーン。幼くもポートマンの美少女ぶりにライフルを構える姿。教えるレオンとのツーショットが画になる。エピソードの積み上げ、孤独な殺し屋だったレオンが愛に殉じていく。レオンがノーマンを導く結末が美しくも悲しい。エンドロールに流れるスティングの「Shape of My Heart」がやけに沁みる。

「グラン・ブルー」のエンゾと共にジャン・レノの当たり役。ファッションや佇まい、セリフの一つ一つに至るまでレオンを魅力的に演じている。そしてナタリー・ポートマンにしてやられた。のちに姫(パドメ)となる彼女は既に無敵。もちろんキレッキレのオールドマンも。でも何よりこの物語を作り上げたリュック・ベッソンに尽きる。彼が最も脂の乗った時期の傑作だ。

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2023/10/28

「ザ・クリエイター/創造者」を観る

今日は「TENET テネット」のジョン・デヴィッド・ワシントン主演、ギャレス・エドワーズ監督作品「ザ・クリエイター/創造者」を観てきた。AIが社会に浸透した40年後の未来を舞台に、人類とAIの共存するニューアジアとの戦いが描かれていく。ストーリーテリングはチャプターを切ってSF小説のよう。総じて平均点以上の作品ではあるものの、何処か物足らないところも。

物語は情報員ジョシュア、戦況を変える子供型AIアルファO(アルフィー)の逃走劇が軸。ただ予告編、作品冒頭の段階で何となくストーリー展開が見えてしまったのは欠点。アジアを横断したロケと高度なビジュアルは素晴らしいけれど、物語に驚きが少ない。物語自体全く違うが、同じ21世紀スタジオ(旧FOX製作)の「アイ,ロボット」を不思議と想起させる。

またロサンゼルスに落とされた原爆?を発端に戦争は始まるが、「AIは悪」と西側諸国の主張に軍人たちが強硬で最初から悪役は西側諸国だと判ってしまう。こういう演出は中盤に入れて欲しい(しかも明かされる真実がトホホ)。劇中に一切出てこないロシアも中国の存在も気になったし。何かモヤモヤしながら観てしまった。

この作品は所々に日本語が使われ、ニューアジア各国の中心部に東京ロケ(都内「龍角散ダイレクト」の電飾とか)を組み合わせて世界観を構築しているのは面白い。この辺は「ブレードランナー」の影響下もあるかな。ネパールの僧侶、SF観の融合も面白かった。「GODZILLA ゴジラ」でギャレス作品に出演経験ある渡辺謙が日本語のセリフを交えて登場している。

もう一つ難点を言わせてもらえれば、やたらに人が死ぬ。世界規模の戦争だから当然なのだが、これほどに人の死が気になるのは、明らかに今日常で起きている戦争の影響。戦争は映画の中だけにして欲しい。

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