「ガンダムデイズ」を読む
週末に届いた小田雅弘著「ガンダムデイズ」を読んだ。作者の小田さんは伝説のモデラー集団ストリームベースの中心人物。今の子達には川口名人が頭に浮かぶだろうが、我々世代はまず、小田さんなのである。
ガンプラブームの頃、その牽引の一つであった「月刊ホビージャパン」とその別冊「HOW TO BUILD GUNDAM」。さらに「コミックボンボン」が創刊、ガンプラがフィーチャーされ、裾野を広げた。その渦中にいた著者が当時を回顧した雑誌連載、それらをまとめたものが本作となる。
ちなみに「月刊ホビージャパン」でガンプラが取り上げられた当時は中学生、購読者だった。ガンプラをキレイに作る事など出来るはずもない。手にした「ホビージャパン」に注ぐ目は写真集的、作品の出来を超えた世界観を楽しむものだった。「HOW TO BUILD GUNDAM」のトリプルドムはアニメの世界を飛び出していた。
その続編「HOW TO BUILD GUNDAM 2」で目立っていたのが、徹底工作と題された1/144ジオングだ。比肩無きクオリティーとそのディティール。キットとは別物。再構成されたボディとシャープなラインは小田さんのイマジネーションと高い工作力の賜物。初見当時、度肝を抜かれた事が思い出される。本著でもターニングポイントの一つとしてこのジオングの事が取り上げられていた。学生モデラーゆえ試験シーズンとの横睨みの中での取り組み、その過程が興味深い。
もう一つ、イマジネーションの賜物がMSVだ。大河原邦男氏のイラストから派生、「HOW TO BUILD GUNDAM 2」でも黒い三連星MS-06Rザクが発表された(同誌面ではゲルググキャノン他多くのMSVが登場)。その後、バンダイが本格的にシリーズ化を進めるが、まさに小田さんの存在ありきだと判る。AFV、飛行機モデラーとしての知識を活かし、裏方としてその世界観を広げていく。
この本を読んでいて楽しいのは読者として表舞台を知っている事で、今回裏側に何が起きていたか判る事だ。メディア、ライター、モデラー、キーマンらよく知る各人の名、点が線で繋がっていく。そしてそれぞれで化学反応が起き、現在までのガンプラの潮流となる。その一つ一つに裏付けされた根拠と経験。フルアーマー、パーフェクト、レッドウォーリアとガンプラの系譜、顛末も楽しく読ませてもらった。
そして何より原点はザクへの拘り。大河原ザクへの追求、イマジネーションによる補間。振り返り今見ても「HOW TO BUILD GUNDAM」での作品群は引けを取らず、しかも色褪せない。第一次ガンプラ世代、殊更当時、「ホビージャパン」「コミックボンボン」を読んでいた人には堪えられない本だ。
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