2009/06/15

「超合金の男 -村上克司伝-」を読む

 アニメや特撮番組制作者と玩具メーカーの関係は切っても切れない。富野由愁季氏が、作品製作における両者の軋轢を吐露していたが、それを知って以来、何処かしら、玩具メーカーに対して偏見を持っていた。実際そのように世に出た玩具は少なくなく、現在一人歩きしたガンダムシリーズ等例に漏れず、そこには玩具メーカーの圧力が見えてくる。しかし両者の関係に軋轢でなく、むしろクリエイティブな相乗効果を生み、エポックメイキングな玩具を提供してきた時代もあった。その中心に居たのが、本著の主人公、村上克司氏である。

 バンダイの人気玩具の代名詞、超合金。常に革新的なアプローチの影に村上氏があった。デザインの裏には子供を喜ばせる仕掛け、テレビ画面と玩具を結びつける驚きに溢れている。デザイン重視となれば、変形や遊びに目を瞑るところ。彼にそんな考えは無く、デザイン上成立している事は手元の玩具で実現させる。そんなコンセプトに基づき、番組の企画段階から参画。ただスタッフロールに乗る事も無く、知る人ぞ知る存在であった。「勇者ライディーン」「超電磁ロボコンバトラーV」「ゴールドライタン」「六神合体ゴッドマーズ」等合体、変形、コンビネーション、どれもが革新的な遊びを提供してきた。

 それだけでなくその手腕、デザイナーとしての目線が素晴らしい。特に「宇宙刑事ギャバン」のコンセプトイメージは、当時衰退期にあった東映特撮ヒーローの息をふき返らせる。メタリックヒーロー、デザイン、演出と斬新な作品開拓に一役買った。その渦中での村上氏の言葉、「俺がギャバンだ!」には唸らされる。この本では、同様にそれぞれの作品とエピソードで繋ぎ、村上氏の姿に迫っている。それだけでなく、玩具、アニメ、特撮好きにはたまらないエピソードでいっぱいだ。

 冒頭、玩具メーカーに対する偏見を述べたが、本書でそれを一蹴する熱意と常にクリエイティブである村上氏に圧倒された。もっとも今もマーチャンダイジングありきの戦略は絶えない。しかしその玩具に子供たちの姿が見えた時、村上氏、あるいは村上イズムの継承者たちによるものなのだろう。玩具は遊びを追求する、あるいは遊びを提供するものでなければならないのだ。幼少期、「勇者ライディーン」の超合金を手にした日の事は忘れない...彼の玩具、超合金に育てられた子供たちに捧げられた本である。


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2007/09/08

造顔マッサージを始めてみる

 先週、日テレの「世界で一番受けたい授業」を観ていたら、田中宥久子なる女性が登場した。61才とは思えぬ肌ツヤ、シワの無さ。これまでの痩身の概念を覆すという話だったが、ボクには話半分。しかし妻から「本を探してみて」とリクエストが入り、すかさずAmazonをチェックした。この人の著作は大きく二つ、全身篇と顔篇である。妻との結論は、とりあえず顔からやってみようという事になった。顔がダメなら、全身も...という結論だ。

 発注したのは「田中宥久子の造顔マッサージー10年前の顔になるー」。DVD付きはカスタマーレビューを見た結論からのセレクト。間もなくAmazonから届いた頃には、妻は準備よくスキンクリームを用意していた。そう、このマッサージにはクリームが必要なのだ。油分が少ないほど良いという。それ以外には何も必要ない。夫婦共に顔中クリームまみれになっていた。何しろ話し半分だったが、とりあえずDVDを再生してみる。

 このマッサージの骨子は、顔の筋肉に沿った11ステップの実施。そして「必ずリンパに流す」動作が入る。老廃物を押し流す、これがこのマッサージのキモだ。造顔愛好者なら「リンパに流す」のひと言で、思わずニヤリするだろう。またこれら11ステップのマッサージも、筋肉の流れ、動きに沿った裏付けあるもの。全身の皮膚は一枚で構成されている、その考えに基づいている。すなわち伸びた皮膚を元の位置中に戻すのだ。中には小学校時代やっていた目の体操に近い動きもあった。DVDの真似をしながら約10数分し、マッサージを終えた。

 クリームを落として鏡を見た妻は、自らの顔の変化に気づいたよう。実際、アゴがすっきりしたようだ。ボクの場合も頬周りに変化があった感じ。この造顔マッサージの痛気持ち良さも売りの一つである。僅かな痛みは脂肪のせいでもあるらしい。さすがに我が顔が小顔になるまいが、少しでもすっきりするのは悪くない。一日一回、継続は力なり。数ヵ月後、街で会っても気づかれない...なんて事はないのかぁ(^^ゞ

070908

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2006/05/10

横山秀夫「クライマーズ・ハイ」を読む

 「ダ・ヴィンチ・コード」の後に読んだのは、横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」である。実は横山さん原作の映画「半落ち」を劇場で観た後、その原作の持つ内容に心打たれた。そしてちょうどその劇場公開時にベストセラーになっていたのが、「クライマーズ・ハイ」だった。まもなく単行本を買ったのだが、仕事が忙しいのを理由に手付かず。そして、そうこうしているうちにNHKでドラマ化された。ただそのドラマはあえて観ず、やはり原作を味わいたいと今に至った。ただ読み出してしまえばあっという間に読破。まさに感情移入どっぷりの内容であった。

 1985年、日航ジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落した大事故。そんな現実の事故を起点に、新聞記者でもあった著者が挑んだフィクション小説。事故に直面した地元新聞社、編集デスク一週間の戦いを描いている。もちろん戦いといっても、彼らの武器はペン。主人公は日航デスクに任命された悠木。彼はペンだけでなく、出稿にあたっての戦い、同僚との葛藤、そして自分との戦いにさらされていく。そして「下りるために、登るんさ」山仲間であり、同僚だった安西の言葉が、その事故を回顧する悠木の心中に去来する。

 NHKでドラマ化された際、何処まで原作に忠実かは判らない。ただ原作では群馬という土地柄、政治背景を織り込み、それが悠木を惑わせていくのだが、そこでもし政治家の名前が置き換えられていたりとかすると、幻滅したかもしれない。ドラマとはいえ、NHKだけに尖った表現はできないように思える。ただそれは原作のディテールであって、この原作本来の惹きつけるものは全く別のところにある。それはサラリーマン生活をする者にとっては、痛感以上の気持を悠木に注いでしまうところだと思う。

 物語は事故が明らかにされる中、社会の縮図、それが主人公の在籍する新聞社の中で展開していく。過去のスクープに囚われた上司たち、彼らを越えようとこの事故現場に張りつく若手たち。さらに販売部門、「水爆」と呼ばれる社長、読者、そして事故に直面した中で何を伝えるべきかと葛藤する悠木。その葛藤がとにかく歯がゆい。特に何かを代替するように突き進む彼の姿、さらにある決断に至る描写は、その文章から緊迫感が伝わってくる。岐路に立たされ、最後にとった悠木の行動。偽善ではなく、彼のそうありたいと思う気持を強く感じた。

 とにかくここで描かれるのはヒーロー像ではない。どちらかといえば今の自分、いや上司等の身近な姿が重なってくることだろう。読者の際するそれぞれの立場、違いはあれども必ずそこに人間関係、そしてさらに家族の姿が見えてくる。特に悠木の息子に対する相違は、衝立岩(ついたていわ)を諦めようとした時、その思いを氷解させる出来事に直面する。そこだけに限らず、この本を読んでいると何度か涙腺を刺激された。そしてとりあえず、「もうちょっと頑張ってみるか」と元気をくれる。「クライマーズ・ハイ」は社会で揉まれる中堅社員、働くお父さんのための応援本かもしれない。

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2006/04/20

「ダ・ヴィンチ・コード」をヴィジュアル愛蔵版で読む

 ここのところダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」を読んでいた。ご存知大ベストセラー、六〇〇ページに及ぶ前後編の大作。文庫が出たばかりだったが、先行発売されたヴィジュアル愛蔵版を選んだ。ルーヴル美術館で起こった殺人事件、巻き込まれた宗教学者、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画に込められた謎。そしてイエス・キリスト。その展開もスリリングだが、歴史の出来事、さらに数々の文献をピースとしてパズルを構成、一つの物語に仕上げている。

 来月には映画版が公開を待つ中、描かれるキリストの在り方が物議を醸している。スコセッシの「最後の誘惑」(この本の中にも登場)、メル・ギブソンの「パッション」同様にある意味センセーショナルかもしれない。また宗教的に接点のない遠き東の島国だからこそ、興味を惹くのは言うまでもない。特に前述の作品に比べ、今回の作品はトム・ハンクスを主演に据えた娯楽作として公開される。日本人の観客がどのような反応を示すだろうか。既に本作登場以後、ムック本も多く出ており、更なるブームが見込まれている。

 さてヴィジュアル愛蔵版の強みは、登場する数々の絵画、写真、キーワード等が具体的に収録されているところにある。本というと作者と読者が共有するイメージの世界が重要。それが読書の楽しみでもあるからだ。しかし有名な絵画を除けば、想像力で補えない点も少なくない。ルーヴルのピラミッドはいかにもヴィジュアル愛蔵版らしい登場の仕方。クライマックスのキーポイントだけに、その美しいビジュアルはより説得力を強くする。またこれに限らず、キリストの謎に迫る過程もビジュアル愛蔵版ならではといえよう。今から読むなら断然、このビジュアル愛蔵版をオススメしたい。

 読んでいると謎解きはいうまでもなく、とにかくこの本の持つ知識とその物量は凄まじかった。そしてトマス・ハリスのレクター三部作を読んで以来、久々にこれでもかの薀蓄(ウンチク)に圧倒された。それがとにかく楽しいのだ。黄金比のネタなんて、会話のつかみにもってこいのように思う。これに限らず、ネタの宝庫が「ダ・ヴィンチ・コード」なのだ。読んでから観るか?観てから読むか?まるで昔の角川文庫のキャッチフレーズみたい。いやこの本って角川書店だったんですね。もちろん映画版も楽しみにしていますよ。

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2006/01/13

新作登場、木曜ドラマ激戦区を観る

 昨日の木曜午後9時10時、ここで三作の新作ドラマが始まった。テレビ朝日は松本清張の「けものみち」、フジは柴門ふみの「小早川伸木の恋」、そしてTBSは東野圭吾の「白夜行」と中身の濃いラインナップ。しかも「白夜行」は初回二時間という力の入れよう。さらに「けものみち」は60分オーバーで、「小早川伸木の恋」の冒頭数分を観る事ができなかった。したがって当日三本をすべて観るのは不可能なタイムテーブル。とりあえず「白夜行」はレコーダーに残し、先に「けものみち」「小早川伸木の恋」の順で観る事にした。

 「けものみち」は遠い昔、NHK土曜ドラマ、和田勉演出で観た記憶がある。当時、松本清張フリークの両親と一緒に観ていたと思う。タイトルと名取裕子が出ていたのはおぼろげに覚えているが、それ以上頭に残っていない。いや残っていたら大変な事だ。そしていま今回の「けものみち」を観て、こんなにも官能的な描写(NHK版にもあったとの事)があったのかと驚いたほど。もちろん僅かなものであるが、そのチラリズムにはそそられる。米倉涼子を主役に前作「黒革の手帖」同様、おどろおどろしい大人の世界を描いていく。初回から展開もセンセーショナル、テレ朝のドラマの中でも異色の存在である。

 数分スタートから見逃したが「小早川伸木の恋」を続けて観た。主演の唐沢寿明は「白い巨塔」と同様に医者の役。ただこの作品はタイトル通りに毛色が違う。こちらのドラマの切り口は非常にパーソナル。いい人小早川伸木の悩みと恋。この作品第一回の見どころは妻役!片瀬那奈のキレ具合に目を見張る一方、とにかく宝塚出身の紺野まひるがメチャ魅力的。第一回は紺野まひるに尽きます。伸木がコロッと堕ちてしまうのはよく解る。とにかく次回も紺野まひるを観るためにチャンネルを合わせます。あと久々、古谷一行もいい味出してるね。

 翌日の今日観た「白夜行」は、個人的にこれら三作中、最も思い入れのある作品。東野圭吾はボクの好きな作家の一人で原作は既に単行本で読み、読んだ当時はその時代を感じさせる作り、犯罪小説として印象に残ったものである。しかし二〇〇〇年に読んだ原作ゆえ、記憶の断片が消えつつあったこの作品を、ドラマ第一回はそんな状況から呼び起こしてくれた。工事が頓挫したビル、質屋、少年少女と執拗な刑事。様々なアイテムは今回のドラマの時代に合わせてはいるが、少しずつ物語がよみがえって来る。むしろその先を知っているからこそ(あくまで断片的にだが)、その行末が気になる。セカチューの二人の本領発揮はこれからだし、武田鉄矢の存在は堅実。そして渡部篤郎は相変わらず気持悪い(演技はワンパターンだし、個人的に彼は好きではないので)。

 とにかく三作品とも興味あるドラマで見逃せない。来週もレコーダーが活躍する事になりそうだ。

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