小島友実さんの著書「馬場のすべて教えます~JRA全コース徹底解説~」を読んだ。グリーンチャンネル「徹底リサーチ! 平成競走馬進化論」や「潜入!馬場管理の舞台裏」で番組MCを務め、独自の切り口で競馬の魅力を伝えてきた著者。その馬場研究をまとめ、2015年に出版されたのが本書となる。
競馬は勝つ事、着順を競うスポーツ。ペース影響もあるが、同時に馬場状態が重要となる。自分が使っている西田式スピード指数に限らず、指数派の人たちは馬場差を考慮、計算に入れて予想している。
今回、この本を読み始めた理由は二つ。先のグリーンチャンネルの番組で興味を持った事。そして昨年11月の京都開催以降で馬場差(馬場指数)が急激に悪化した事だ。そしてこの本を読んでその謎は氷解した。
これまで京都競馬場の芝コースは路盤排水効率が良く、当日雨の馬場悪化を除き比較的好条件で施行できていた。馬場指数をみてもそれが受け取れる。しかし昨年の台風以降、それに伴う豪雨はこれまでの馬場(芝)悪化と回復のサイクルを超えるものだったと推測する。そして今開催もその影響が残っていた。
京都では他場で普及しているエクイターフを導入していない点(2015年本著発行時)も大きい。JRAのHPでも言及されていないため実態は判らないが、現時点も使っていないと推測する。エクイターフは日本の土壌、環境にあった耐久性のある芝。オーバーシードと共に冬場であっても緑のターフ、安全性を支えている。
元々京都はオーバーシード中心の対策で、本格的な芝の張替えが行える春開催後まで手を付ける事ができない。たぶん今年の春の天皇賞は例年以上にパワーを要求される事だろう。当たり前なのだが、どの競馬場も夏を前に芝を張替える。その点で芝の選定、最終開催の有利不利も出てくるのだ。
なお京都競馬場は今年の春開催を終えると長期工事(2023年3月終了)に入るが、昨秋の状況を踏まえた路盤改修がなされるのでは、と思う。
そうして思い出すのは競馬を始めた90年代初頭。メジロマックイーンとトウカイテイオー、春の天皇賞2強対決。芝と呼ぶには剥がれまくっていた直線。テイオーが伸びあぐね、スタミナの勝るマックイーンが圧勝した。もし今の馬場管理レベルだったら、あそこまでの差になっただろうか。テイオーは戦後に骨折を免れていたかもしれない。本著を読むととにかく馬場管理の進化に驚かされる。
閑話休題。先のエクイターフ、そしてバーチドレン等のエアレーションに言及。レースの安全性、公正性、全能力を発揮できる事を目指す改良の経緯が興味深い。特にファンの間で議論されるのが、芝の硬さ。硬いから速いのではなく、あくまで走りやすいから。今や日本競馬の芝の硬さは欧州並み。細かな指摘は本著に譲るが巻末の座談会で、ロンシャンを目指すなら前哨戦を使う長期滞在を薦める声は見逃せない。
また芝コースに限らず、ダートコースにも触れ、路盤状況、開催日のコースメンテ事情等、実に読み応えがある。また改めてコース解説を読むと、色々と思い知らされる。ジョッキー、競走馬、そして馬場造園課の皆さんって凄いよ。そして本当に競馬は奥が深い。アムロじゃないけど、うちの子供に「オヤジが熱中になるわけだ」と言われそう。
本著はそんな競馬オヤジ、競馬沼にハマった方にお薦めしたい。
最近のコメント