中森明菜「CRIMSON」と竹内まりや「REQUEST」、そして「駅」


ここ数日、「駅」が脳内再生し続けている。「駅」とは中森明菜10枚目のアルバム「CRIMSON」(1986年リリース)に収録されている楽曲。そしてこの曲の作詞作曲は竹内まりやであり、自身のオリジナルアルバム「REQUEST」(1987年リリース)にこのカバー曲が収録されている。そんな「駅」が明菜になったり、竹内まりやになったり頭の中を駆け巡る。
突然脳内再生されるようになったかはご存知、例の一件からだ。しかも別のネット記事には過去に遡って明かされた話がきっかけ。何故、竹内まりやが「駅」をセルフカバーしたのか。そこに夫でありプロデューサーの山下達郎が絡んでくる。
山下達郎曰く「(前半略)そのアイドル・シンガーがこの曲に対して示した解釈のひどさに、かなり慣慨していた事もあって、是非とも自分の手でアレンジしてみたいという誘惑にかられ、彼女を説得してレコーディングまでこぎつけた」とのちの竹内のベスト盤「Impressions」(1994年リリース)のライナーノーツに書かれていたというのだ。
実は「CRIMSON」「REQUEST」「Impressions」3枚ともCDで買っている。ただ「Impressions」のライナーノーツは購入から一度も読んでいなかった。そして30年を経た今日改めてCDを開いて読んでみた。知らなかった、本当に書いてあった。ズバリ文中のアイドル・シンガーとは明菜の事である。
自分にとって明菜は特別なアイドルでアーティスト。彼女が長期休養に入る前、ワーナーミュージック所属の頃まで毎CD買っていた。この長期休養のきっかけになったのは金屏風事件と呼ばれる記者会見で、当時違和感を持ってテレビを見たのを覚えている。違和感とは大人の事情だったり、交際相手の某男性アイドルだったり、その所属事務所の大きな力だったり。
まぁそれはさておき、「駅」の収録された「CRIMSON」は一種のコンセプトアルバムである。当時アイドルのアルバムとしてはかなり特殊。「駅」が有名になっただけで彼女のシングル曲は一切収録されていない。竹内まりやと小林明子の二人からの楽曲提供のみ、大人の独身女性をイメージさせるような作り。生活感溢れるSEで始まって終わる。
ここで山下達郎のライナーノーツのコメントにある"解釈"だ。竹内まりやの明瞭なボーカルと明菜の趣ある歌声。山下達郎自身もプロデュースした「REQUEST」の「駅」を聴けば、彼の持ったイメージは明らか。「駅」一曲に限れば山下達郎の意見は外れてはいないように思える。
だが「CRIMSON」の「駅」はあくまでアルバムを構成する一曲であり、全体の世界観は大人の雰囲気が漂う。同アルバム中の竹内まりやの楽曲はアキナイズされ、竹内の持つ何処か明るくドライな独身女性の世界とは異なる。「OH NO, OH YES!」は妖艶だし、「ミック・ジャガーに微笑みを」は明菜らしいロックな一曲。
そもそもこの時、竹内まりやは明菜をイメージして楽曲を提供している上「自分で歌う事に難色を示していた」と言うし。もし「駅」が山下のイメージに寄るものだったとしたら、アルバム「CRIMSON」の魅力は明らかに半減していただろう。
自分の中では中森明菜の「駅」も竹内まりやの「駅」も好きなのだよ。明菜の長期休養とワーナーからの離脱もあって竹内まりや(今もワーナー傘下)とのコラボレーションはこの時の一度だけ。山下が考えるような憤慨が竹内まりやにもあるのなら、楽曲提供しなかったかノンクレジットだってアリだった。でもそんな事は無かった。明菜のアルバムに対し旦那さんはあくまで外野だし。
ここ数年、達郎さんのラジオを聴いてれば、はっきりした物言い(正しいかどうかは別)は知っていたけど、この前の「恩と縁」発言.......。ちなみに例のライナーノーツが付いた「Impressions」は明菜がワーナーを離脱した後のリリース。だから好きに書いたのだろう。でも明菜だってそれまでのワーナーを充分に潤わせていた人。「恩と縁」を口にする人のする態度では無いよ。そして今も。(おしまい)
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