2023/09/23

映画「コンサート・フォー・ジョージ」を観る@静岡シネギャラリー

今日は静岡市へ遠征、盟友N氏と静岡シネギャラリーで映画「コンサート・フォー・ジョージ」を観てきた。近場でこの作品が上映されないため、今回の遠征となった次第。ちなみに盟友N氏と静岡シネギャラリーは「ホテル・ルワンダ」(2006年)以来。

ビートルズ第3の男、レノン&マッカートニーだけではない事を知らしめ、メロディーメーカーとして活躍したジョージ。亡くなった翌年の2002年、友人であるエリック・クラプトンを中心に親交あるミュージシャン達がロイヤル・アルバート・ホールに集結してコンサートが催された。そんなコンサートがジョージ生誕80周年の今年リマスター化、20年を経て劇場公開となった。

コンサートはジョージの人柄を表すよう。ユーモアに溢れ、何処かシニカルも情緒的。久々、モンティパイソンの面々の寸劇のラストでは現場の観客同様に爆笑。彼らとビートルズとの縁というか、英国的笑いというか。そのメンバー、テリー・ギリアムも演者に戻って大いに笑わせた。

ただコンサートの本分は彼に捧げられた音楽。ステージではジョージの作品あるいは彼に捧げられた作品が並ぶ。耳馴染みのビートルズ時代、ソロ時代の曲が名演と共に甦る。特にステージの中心ではジョージの愛息、ダニーが演奏する姿。若き日のジョージそのものでクラプトンやポールの傍らに居ると感慨深い。

また「ハンドル・ウィズ・ケア」なんて復活トラヴェリング・ウィルベリーズだったし、「タックスマン」はトム・ペティが原曲同様にねちっこく歌う姿が印象的。個人的には「ホース・トゥ・ザ・ウォーター」を歌うサム・ブラウンが印象に残った。サムのお父さんジョー・ブラウンは縁でビートルズを前座にさせてたのね。

どの曲も素晴らしいが、やはり後半の連続コンボ。「マイ・スウィート・ロード」「オール・シングス・マスト・パス」「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」の3曲に圧倒された。特に「ホワイル・マイ・ギター...」はホワイトアルバムが初CD化された時、最も聴いた大好きな曲だから(それがクラプトンの客演だったのも数年後に知る事になるのだけれど)。

またビリー・プレストンが歌う「マイ・スウィート・ロード」がこれまたいい。ドキュメンタリー「Get Back」を観た人なら判ると思うが、ある騒動直後のビートルズをビリーがサポート。色々な意味で彼がそこに居なければアルバム「Let It Be」は無かったかもしれない。実は騒動の発端はジョージだったし。そんなビリーがジョージのために歌う。それだけで泣いてしまう。

この「コンサート・フォー・ジョージ」の演奏はYouTubeでも観る事ができるけど、スクリーンでは別格。静岡シネギャラリーの音響は独特(ホームシアターよりもピュアオーディオっぽさがある)だけど、だからこそ音楽映画には向いている気がした。遠征の甲斐があったしやはり音楽映画は良いなぁ。

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「しずかちゃんとパパ」を観る(完走)

NHK火曜10時のドラマ「しずかちゃんとパパ」(全8話)を観終わった。「VIVANT」ばかりに注目が集まった夏ドラマだがベクトルこそ違えど、この作品こそ今期最高だったように思う。

今期というのは正しくないかも。実は昨年BSプレミアムで放送され好評を博したこのドラマ。当時、観る機会を逃すも得た今回。ラジオショーでナイツ塙さんが笑福亭鶴瓶のゲスト回に「昨年最高のドラマ」と評していた。その言葉に間違いはない。

耳の聞こえない父と健常者の娘(そのような子を"コーダ"と呼ぶ)親子を描くホームドラマ。時期的に「コーダ あいのうた」が米アカデミーを受賞した直後で二匹目のドジョウと思われるが、ドラマ作りはそんな安直じゃないだろうし、それ以前に準備されていただろう。

田舎町のミノワ商店街を舞台に主人公しずか親子と街の人たちによる群像劇。しずかの父を演じたのが鶴瓶で唯一無二の存在感。名優に異論無し。毎話、琴線に触れる物語のトドメであの笑顔にやられる。判っていてもヤられる。ある意味、反則。

娘しずかを演じたのが吉岡里帆。かつて"あざとい"と言われた存在感を本作では逆手に取った感じ。しずかの姿を通してコーダ特有のエピソードが重なる。手話を交えた鶴瓶との会話、そのやり取りに演技を超えた親子の姿を感じた。

このドラマに悪人は存在しない、優しい世界が描かれる。ある意味、ファンタジー。でもドラマとはそもそもファンタジーだし、そこに僅かなリアルが差し込まれる事で物語に躍動が生まれる。演者皆とても良いシナジーを生んでいた。そして"米野菜"がツボ。本当に良いドラマでした。(おしまい)

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2023/09/18

「ミツバチのささやき」【午前十時の映画祭13】を観る

今日は午前十時の映画祭で「ミツバチのささやき」を観てきた。1973年スペイン映画、日本では1985年に公開された。その当時、果物を差し出す主人公アナのカットが紹介されていた事を思い出す。目がクリっとした可愛さで観る者の心を鷲づかみ。ちなみに今回の映画祭の紹介でも同じカットが使われていた。

物語は内戦終結直後のスペインが舞台。養蜂を営む父と母、アナとイザベルの幼い姉妹の姿が淡々と描かれていく。物語の中心はアナ。劇中、住む村にやってきた映画興行。その残像を追うよう現実に入り込んでいく。やがてやって来た負傷兵を介護するアナだったが....

と書くとシンプルに思うが、結構難解なファンタジー。実は今回の上映前後に町山智浩氏の映画解説が付いており、製作当時のエピソードが語られる。ただ町山氏曰く「DVDで判る事」とあるように、独裁政権が倒れた後に製作スタッフから改めて発言があったとの事。政治批判を作中に潜ませる映画は少なくないが、この映画はかなり難しい。

でも観ていて気付いたのは「これ、パンズラビリンスじゃねぇ?」。すると上映後に町山氏も言及していた。製作当時の時代を考えれば徹底的に奥に隠した形。最適解としての「ミツバチのささやき」だったのだろう。民主性を取り戻せば、判り易い「パンズラビリンス」のように描く事ができる。

だが何故、午前十時の映画祭でこの作品が選ばれたのか。今の社会に対する危機感ではないかと思う。あえて解説付きでの上映だし。映画界はリベラル。自由を謳歌できる今だからこそ、ここ数年著しい傾右化への警鐘なのかも。

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日曜劇場「VIVANT」を観る(完走)

TBSテレビ日曜劇場「VIVANT」を観終えた。日曜劇場というと東芝がメインスポンサーだった頃はファミリードラマの時間枠だったが、近年は重厚な作品に変わっていった。最たるは「半沢直樹」。そのメイン演出、福澤克雄が原作を手掛けたのが、今回の「VIVANT」だった。

放送前からキャスト以外の情報が流れずに内容不明。物語が進みその理由は明らかになる。そう、国の闇組織を描くからだ。しかも荒唐無稽な組織でなく、「別班」と呼ばれ、以前国会でも話題になった。情報漏れて圧力が掛かるのは世の常。ならばズバリ、先に放送したもん勝ち。

物語はテレビの枠を超えてダイナミック。モンゴルロケにカーアクション、車両破壊と「西部警察」を彷彿とさせる第1話。第3話までは巻き込まれ系主人公乃木がヒロイックな公安、野崎の助けで繰り広げる冒険劇。だが第4話でその関係性が逆転する。そこからが物語の本番。きっと福澤氏の見せたかったものなのだろう。

皆、007のMI6よろしくこういう組織が大好き。トム・クルーズ「ミッションインポッシブル」のような豪快アクションもいいが、このドラマでみせる細かな凄み(2発の銃声とか、バナナとナイフとか)も面白い。リアルと空想のバランスも絶妙。そして諜報活動も日本っぽい。実在する(であろう)こそ興味は深まる。その指令がキムラ緑子ってなのもツボ。

SNSは"VIVANT考察"で盛り上がったが、個人的には考察よりも受動的に楽しんだ。最終回前に2周目を楽しんだドラマは初めて。何しろ細かいツボが隠れてる。見直して気づいたが、セリフの端々に「ダーティハリー」、しかも吹替版のセリフが隠れてる。「やれやれ」なんかは多い。「こん畜生」もあったなぁ。

「スターウォーズ」もそう。これは予てから指摘されてたけど。それに最終回、ある裏切りに気づき、緊急帰国する乃木の恰好はまんまルーク・スカイウォーカーだったからなぁ(ちなみに"ある裏切り"は2周目で確信したし、当たってました)。それだけでなく「レザボア・ドッグス」(っていうか西部劇か)も出てきたし。

いや、なんだかんだ「VIVANT」ってTBSドラマの潮流だったんだよなぁ。海外ロケ、警察、秘密組織とくれば「キーハンター」「Gメン75」まで遡る。それを製作陣が意識していたかは判らないけど。まだ未回収の伏線もあるけど、それはシーズン2への布石という事で楽しみに待ちます。(おしまい)

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2023/09/16

「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」を観る

今日はデヴィッド・クローネンバーグ監督「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」を観てきた。我が田舎のような土地でクローネンバーグの新作上映はなかなか無いのだが、本作はその機会に恵まれた。ヴィゴ・モーテンセンとレア・セドゥが主演、近未来を舞台にあるパフォーマーが出くわす出来事とその背景が暴かれていく。

特に前情報を入れず、クローネンバーグだからと心得て観始めた序盤の15分間は口あんぐり。だがまもなく繰り広げられていく映像の後、その世界観に惹き込まれていく。これはズバリ、クローネンバーグ版ノワール。次々と暴かれていく未来の闇にヴィゴ演じるソール同様悲しみが満ちてくる。

近未来とはいえ、特に明言されず。それが数年後でも、100年後でも通用するクローネンバーグのレトロフューチャー。謎の器具にソールとカプリースによる我々の想像を超えたアートパフォーマンス、融合した官能の世界。これを観ると舌ピアスなんて甘い甘い。この映画における価値基準の変化、クローネンバーグの想像力が恐ろしい。

彼の旧作同様、クローネンバーグの3点セットは健在。エロ、グロ、そして様式美。それを体現するレア・セドゥら女優陣。裸体を晒すも露骨な描写でない分、より想像力を掻き立てる。ただソールのセリフを借りれば我々の喜ぶ行為は「古い」らしい。だからといって自分はこのまま「古い」ほうで良いのだけれど。

物語には目前の環境問題、人類進化の行先、管理社会とか、隠されたテーマが見えてくるが、一度でその全てを理解するのは難しい一方、それら断片が知的好奇心を刺激して面白い。これまでのクローネンバーグ作品を受け入れられれば、本作も間違いなく気にいるはず。ハワード・ショアの音楽も印象に残った。

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2023/09/15

映画「グランツーリスモ」を観る

今夜は映画「グランツーリスモ」を観てきた。ご存知、カーシミュレーターであるゲーム「グランツーリスモ」を題材に、優秀なプレイヤーを集めたGTアカデミーとそこで選ばれたヤンを主人公に描く実話ベースのサクセスストーリー。実話ベースであるが、映画用にステレオタイプの悪役を用意したり多少の脚色は感じられる。

監督は「第9地区」のニール・ブロムカンプ。正直、これまでの彼らしくない題材。だが意外に正攻法な語り口でヤンの成長とそれを支えるデヴィッド・ハーバー演じるジャックとの師弟関係が描かれていく。加えてレースシーンの迫力とゲーム「グランツーリスモ」を意識した演出、効果音が楽しい。

ファナテック製ステアリングコントローラのプレーヤーが、シムレーサーとして猛獣日産GTRを駆る。しかもGTアカデミーではそんなGTRを走らせ放題。フィジカル面を補うエピソードも出てくるが、意外とすんなりリアルレーサーに育っていく。コンパクトにエピソードを積み上げてテンポ良さを選んだ演出だろう。それでも本編135分とやや長めではある。

やはりこの映画最大の目的は「グランツーリスモ」のプロモーション。ソニー配給はもちろん、SCEが母体と思われる制作会社PlayStation Studiosによるもの。この作品は試金石、これを足掛かりに様々なゲーム(プレステ専用)の映画化を進めていくだろう。ただそれが十二分に活かされていたかは疑問。

物語が実話、王道過ぎてデフォルメが少ない分、映画としてのカタルシスに欠ける。「グランツーリスモ」の凄さは伝えてもその面白さまで訴求するに至らず(それなりの説明はあるけれど)。タイミングと好みはあるけど同じシムレーサーを扱う「ALIVEHOON アライブフーン」のほうが、すぐにGT7をやりたいと思わせたし心惹かれた。

個人的な見どころは平岳大演じる山内一典氏のなりきりぶりと、別役で登場する山内氏満面の笑み。そこは劇場で確認されたし。またおなじみのコース、高難易度のニュルブルクリンクとかサルトサーキットとか観ていて思い出させる。そしてただ一つ、オープニングかエンドロールで「Moon Over The Castle」を流す粋が欲しかったなぁ。

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2023/09/13

「クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男」を観る

今日は仕事帰りに「クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男」を観てきた。ご存知、クエンティン・タランティーノのフィルモグラフィーと人柄を出演俳優や関係者のインタビューで綴るドキュメンタリー映画。

この作品、タランティーノを描く作品であるが、彼自身へのインタビューは一切ない。あくまで彼と仕事をした者たちのコメントを重ね、撮影風景と共に映画監督=オタクたるタランティーノに迫る。その点で彼と組んだ人たちから見れば否定的な意見は出てこないし、多少バイアスは掛かっている。それでもタランティーノの映画へ取り組む姿が垣間見えるし面白い。

さてタランティーノにとって避けて通れないのが、製作で組むハーヴェイ・ワインスタインの事だ。このドキュメンタリーでもワインスタインとのエピソードが語られるが、偏屈で傲慢、そしてハリウッドを震撼させたスキャンダルに及んでいく。発覚後のタランティーノの姿勢は当然だが、当時実態を知らなかったか疑問はある(「キル・ビル」vol.2、撮影中の事故隠蔽の背景とか)。

このドキュメンタリーで物足りなさがあるとすれば、タランティーノの言葉はあっても過去のインタビューからの引用(テロップ)のみという事。年始に観た「モリコーネ 映画が恋した音楽家」のような深みが足らない理由だと思う。彼と3本組んだユマ・サーマンのインタビューも無く、先の問題と共に複雑な事情があったのではないか。

「レザボア・ドッグス」から「エイトフル・エイト」までの八作を時系列で追いつつ、初期の天才的な手腕から近作のような成熟した作品作りへの変遷が語られていく。ただ個人的には荒削りながら天才的な初期の作品が好き。なおこの映画はタランティーノ作品のカタログ的側面もあり、観ていない作品では少なからずネタバレになってしまう点は注意。

追伸.
やはりワインスタインの話は今の日本にタイムリー過ぎる。そして日米のマスコミの取り上げ方の差を痛感。日本のマスコミや経済界が動き、やっと日の目をみた問題も政治(の墓穴隠し)に利用されているような気がするし。あと「キル・ビル」は2部作でなく、1作品で描けていたら大傑作になったと今も思う。あくまで余談ですが。

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2023/09/10

「レザボア・ドッグス」を観る

今日はクエンティン・タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」を観た。1992年公開のアメリカ映画。タランティーノのデビュー作品ながらも一躍その名を世界に知らせた。タランティーノは監督、脚本、出演と三役をこなし、ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、スティーヴ・ブシェミらキャストが名を上げた作品でもある。

実を言うとこれまでこの作品は未見だった。理由はこの作品のキモ、裏切り者が誰かを(人から聞いたか、ネットだったか...)知ってしまったからである。この手のクライムサスペンスでネタバレは御法度。「レザボア・ドッグス」のタイトルを聞くたびに「XXXXなんだよなぁ」と脳裏をよぎり、つい観ようとする気が失せてしまっていた。

でもこの金曜からタランティーノのドキュメンタリーの公開が始まり事態は変わった。やはりデビュー作を見ずにそのドキュメンタリーは観る事ができまい。作中最もフィーチャーされるだろうし。そして観終わってそんな事は杞憂に終わり、さすがタランティーノとその内容に唸った。

語り口はその後のタランティーノ作品の原形。意味のあるようで無いようなセリフの羅列、だが物語そのものがトリッキーで部分部分のインサートにやがて全体像が見えてくる。そして衝撃的なラスト。映画ファンならこんな作品を作ってみたいと夢想するだろう。タランティーノ自身映画オタク中のオタクであり、まさに本作はその結晶。

本作はタランティーノ監督作の中でも最も短い100分の作品。登場人物も限定的で舞台劇然とした雰囲気もある。特に犯罪作ながら強奪シーンはほぼ出ずにわずかな暴力描写と膨大な"意味のあるようで無いようなセリフ"で描き尽くす。冒頭、濃密な関係性を匂わしつつ、実は...というところはタランティーノの構成力。むしろキモはこちらのほう。

時系列に頼らない物語の組み替えは次作「パルプ・フィクション」でより進化していくが、その骨格は本作にも感じられる。だけどクセになるのはやっぱり"意味のあるようで無いようなセリフ"何だよなぁ。本作でもパム・グリアの名が出てしまうと「ジャッキー・ブラウン」を観たくなる。いや、観た事ないタランティーノ作品って多いんだけどね。

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2023/09/02

「PATHAAN/パターン」を観る

今日はインド発のスパイ・アクション映画「PATHAAN/パターン」を観てきた。「RRR」に続けと世界を席巻するインド映画。そのフォーマット(ダンスと音楽)で146分濃密な物語をみせていく。冒頭からグイグイと引きこまれるのは「RRR」同様。本作はアクションを含めてとても見応えある作品に仕上がっている。

まずアクションは「MI:デッドレコニング」に負けていない。アクションの量は普通の大作の数倍ではないか。例えばドバイでのカーアクションに車上バトルと派手さは明らかに上。僅かに合成感はあってもヒロイックな見栄の切り方で気持ちいい。また007のオマージュともとれる雪山ロケーションが嬉しかった。

主人公パターンにしても敵役ジムもこれでもかのシックスパッド超えの割れた肉体美に参る。そうでなきゃ拷問に耐えられまい。そしてヒロインはパキスタンのエージェントでまさに「私を愛したスパイ」だ。パターンとの駆け引きにアクションも魅せる。ほぼ半裸のシーンは目に毒ならぬ徳。あるシーンで彼女のコスチュームに笑ってしまったが、その後の展開で納得。

物語の中でアフガニスタンがカギを握るが、作中だけでなく同国、インドとパキスタンとの関係性を表す。パターンとのエピソードにも長きに渡って関わりを持っていたし。もちろんそこにタリバンやロシアも絡んでくるわけで、現実共々世界情勢は複雑。映画とはそんな歴史に理解を深める機会だと改めて思う。

さて本作は「パターン」の物語であるが、劇中彼を助けた「タイガー」は別の作品「タイガー 伝説のスパイ」の主人公との事。そちらも早速追い駆けなければ。何やらインドでは彼らを含めたユニバースを目論んでいるらしい。それは楽しそう。日本なら別班(VIVANT)と44(ダイマジン).....とは行かないか。

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2023/09/01

「こんにちは、母さん」を観る

今日は映画の日。そこで公開初日となる吉永小百合主演、山田洋次監督作「こんにちは、母さん」を観てきた。現在の東京下町を舞台に足袋屋を営む母と大会社の人事部長である息子を巡る人情劇。そんな母を吉永、息子を大泉洋が演じる。

山田監督らしいセリフの応酬と小ネタにクスっと笑う。前半は達者な大泉にばかり目が行くが、気がつけばちゃんと物語の中心に吉永小百合が居る。一つの親子観に自分らしい生き方を求めていく二人の姿を描いている。彼らにはちょっとほろ苦いラストだが、それもまた人生。そして作中で様々な人生が交錯する。

そこで欠かせないのが二つのエピソード。大泉演じる人事部長に課せられたリストラ、もう一つは吉永がボランティアで参加するホームレス支援。物語は喜劇だが、リアルな部分が挿入される。早期退職、リストラは身近であった出来事だし、今の日本の実態。ホームレスだって負の側面。この映画でそれ以上の訴えは無いが、伝える事に意味がある。

だからといって説教臭さよりも正直な視点。そこに存在感溢れる田中泯と吉永に向けた率直なセリフが可笑しい。そして橋の上、戦中世代の山田監督の気持を映したような言葉。戦後世代が束になって偽りの戦後を語っても敵わない。こうしたリアルさの匙加減に笑いのオブラートこそ山田監督の真骨頂に思う。

その笑いに宮藤官九郎が参戦。監督から撮了時に「この作品は君に掛かっている」と言われるも「もっと早く言って欲しかった」というクドカン。"よC永小U合"からせっかちだと言われた山田監督。そんな二人のエピソードをクドカンのラジオ「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」で聴いた後だから余計に可笑しく、鑑賞中にカメラの向こうの監督の姿が見えていた。

そしてこの作品のもう一つの主役は下町。スカイツリーと街並み、隅田川に花火。店先の映るシーンは「男はつらいよ」を思い出される。あと大泉の娘を演じた永野芽郁が彼女らしさを残しつつこれまでの作品以上に良かった。この作品を観て改めて自分はホームドラマを欲しているのだなぁと痛感。本当に観て良かった映画でした。

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