野村克也著「野村ノート」を読む

野村克也著「野村ノート」を読んだ。2005年初版発行、単行本で持っていたもの。たぶん昔一読していると思うが、改めて読んでみた。野村さんが亡くなって3年。毎日アメリカから日本を盛り上げてくれる大谷翔平の活躍に目が行くものの、今春あれだけ盛り上げたWBCは別物で今のプロ野球人気を後押しできているかは疑問。
この本が書かれたのは阪神監督を辞めた年から楽天監督就任までの狭間。18年前の話であるが、本著で挙げられている問題点は今にも通じてかつ不変。それは野球だけでなく我々の社会にも相通じる。野球に関しては原理原則を追求し、研究を重ねた結果。それはヤクルトの黄金期(リーグ優勝4回、日本一3回)に結実する。
だが意外な事実。野村さんは南海時代に監督兼任(プレイングマネージャー)はあったものの、その後ヤクルトで監督となるまでコーチ経験は無かった(ただリトルリーグのオーナー経験、野村さん曰くこれが重要だと)。二軍監督やコーチ経験者こそプロ野球監督向きと思ってしまうがそうではない。落合さん(中日)も今年WBCで手腕を発揮した栗山さん(日ハム)も当時経験がないまま監督で結果を出した。
そこで大事なのが原理原則。表向き監督独自の色(野村さんで言えばID野球)に思えるが、その根底はどの優秀な監督であっても変わらない。投手の配球術、打者のスタイル、それぞれのタイプを分析し、最適解を見出す。上位チームとの均衡、あるいは劣る戦力だからこそ時にギャンブル性、意外性(ヤマカンを賛美している訳ではない)をもって打開する。そこが面白い。
時代的にビジネス書的な側面もあるが、各章の見出しをみていずれも的を得ているものばかり。自分の会社や立場を顧みて反省しきり。ITやシステムばかりに目がいく昨今だが、野村さんが説く人間作り、人間学は組織作りの基盤。適材適所、個性を紐解き、個人の地力を付けていく。今のご時世だからこそ大事だと思う。
本著の中でも野球人気の凋落が指摘されているが、先の通りに今も変わらない。例えば今年からテコ入れに本場メジャーがピッチタイマーを導入したが、野球の本質=間のスポーツだという事を判っていない。野村さんはそこに戦略やドラマがあると分析するが、強く同意する。
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