「原田眞人映画祭」@沼津市民文化センターへ行く
今日は盟友N氏と沼津市民文化センターで行われた「原田眞人映画祭」へ行ってきました。2025年に亡くなった映画監督原田眞人さんを作品を通して偲ぶイベントです。原田監督は沼津市出身であり、地元を愛すだけでなく、その作品の中でも息づいていました。今回、沼津のフィルムコミッション、ハリプロさん主宰でこのイベントが開催されました。
作品は第1部「BAD LANDS」、第2部「日本のいちばん長い日」を上映。また出演俳優である大場泰正さん、戸塚祥太さん(A.B.C-Z)、そして御子息であり編集に携わる原田遊人さんによるトークショーと盛り沢山でした。遊人さん曰く原田家新年会に呼ばれる監督に認められた二人ということです。
原田監督が舞台出身の大場さんとの出会いに翻訳劇への酷評が興味深かったです。何せキューブリックに日本語訳を認められた原田監督ですから、(あくまで想像ですが)その翻訳に言葉や文化の根幹に感じた違和感を正直に言ったのでしょう。トーク中の話題にもあった「日本のいちばん長い日」森陸軍中将を説得する大場さん演じる井田の鬼気迫る表情は作中で印象に残りました。
戸塚さんも同じ「日本のいちばん長い日」での登場シーン、さらに撮影初日のエピソードトーク。セリフに集中したあまり、固まってしまったこと。大場さんと同じ舞台の多い戸塚さんも初めての映像作品、しかも原田作品の撮影スタイルに圧倒されたそうです。また遊人さん曰く50メートル先に話すように間近で話す(怒る)監督も原田組の特徴らしいです。
原田監督は「日本のいちばん長い日」以降、原田監督の作品の常連となり、「BAD LANDS」でも”教授”役で出演。異なる作品とキャスティングを遊人さんは小津安二郎監督の作品出演者になぞらえてお話されていました。例え異なる作品であっても何処かに過去作との関連性を与えているのだと。
一方で戸塚さんはスケジュールの関係で原田作品一作のみとなりましたが、実現に至らなかったマネージャーに恨み節も(苦笑)。遊人さん曰く原田作品22作への関わり(出演を含めて)の中で「おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!」で関根勤さんとの対峙、幼少期ながらしっかりとしたセリフを挙げていましたね。ちょっと観たいな。日本映画専門チャンネルでの録画が残っているのかも。
さて映画のほうの話へ。2作とも未見です。ただし「日本のいちばん長い日」は岡本喜八版を遠い昔、テレビで観た記憶がありますが、内容はほぼ覚えていません。第1部「BAD LANDS」ですが、2023年公開の原田監督の最終作。大阪を舞台に特殊詐欺組織と過去の因縁と対決していく主人公の姿を追う犯罪映画です。
主人公のネリを演じたのは安藤サクラ。犯罪に手を染めた彼女の過去が痛々しいです。父親、元カレ(?)と何やってるんだと思わせる人たち。組織の頂点と社会の底辺の人々の対比、とことん描写した裏社会。ある意味「KAMIKAZE TAXI」系の犯罪作と言えるかもしれません。
143分の作品ですが、原田作品の特徴でもある緩急あって最後まで見応えがありました。そして本作の見どころは安藤サクラの演技だと思います。主人公の運命、陵辱に耐えうる表現力、それを具体化する演技。男の映画と称される原田作品ですが、「わが母の記」以降、それだけではないことがわかります。
この作品で出色は盟友N氏と同意見で曼荼羅役の宇崎竜童ですね。主人公の後見人として関わった男の生きざま。序盤は弱々しく、しかし後半以降はかつての男の強さを見せつけます。特に俳優の持つ背景までこの作品の力にしている気がします。安藤サクラ、宇崎竜童、そして大場さんもしかり。
さて「日本のいちばん長い日」ですが、半藤一利原作のノンフィクションの2度目の映画化で2015年公開となります。終戦日の1945年8月15日までの政府、軍部、天皇、そして日本を描いた作品です。今回原田版を観て、賛否の否の部分は何となく分かりました。歴史劇らしいケレン味、重厚さを削ぎ落とし、原田監督得意の緩急で迫った作品だからです。
必要最低限の状況描写、それを埋める俳優陣の演技。群像劇なので歴史的事実を時間を追って描いています(そういえば「BAD LANDS」も経過を追った描写がありましたね)。軍部だけが突出していた時代との違い、外堀が埋められたゆえの苦しみのあとが伺えます。そこに様々な覚悟があるし、終戦となる日に至ってもそれは変わりません。
原田監督が撮りたかったという3つのテーマの一つが終戦。日本を変えた出来事として残りの2つ、「関ヶ原」(戦国時代)と「燃えよ剣」(幕末)でこちらも撮られています。この作品の観易さは両刃ですが、戦後生まれ、特に若い人たちの門戸として、観たあとにこの作品の行間(歴史的事実)に触れて欲しい意図も汲み取れます。または今の平和の意味、投げ掛けとも。
それだからこそ演者と歴史に実在する登場人物たちの一体感が重要です。山崎努演じる鈴木貫太郎総理、役所広司演じる阿南陸軍大臣、さらに軍部の将校たちも皆、物語の中に対等で運命の日に向けて収束していきます。本木雅弘演じる昭和天皇のひと言が実際の天皇陛下ご本人を彷彿とさせるシーンもあり、より玉音放送の重みを感じました。
最後に今回の2作共に最後まで目が離せない作りでさすが原田作品と再認識できました。原田眞人監督の作品で未見のものはまだありますが、できれば大画面、スクリーンで観る機会が望ましい気がしました。是非、第2回「原田眞人映画祭」には遊人さんが挙げた日本未公開の海外撮影作「栄光と狂気」が観られれば良いなぁと思います。
追伸.
会場入口には先日の追悼回顧展の縮小展示が作られていて、会場の皆さんが集まっていました。そして原田監督といえば「北口亭」からのお花が送られていましたね。「しずおか映画祭」(今回も磯村勇斗さんのビデオメッセージあり)で何度もネタになりましたが、「北口亭」の餃子は出演俳優の皆さんにも大人気だったそうですよ。(おしまい)
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