« 「エヴァンゲリオン30周年特別番組「残酷な天使のテーゼ」時代も国境も超えて」を観る | トップページ | 第104回凱旋門賞をネット観戦する »

2025/10/05

「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ(字幕版)」を観る

今日はAmazonプライムで「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ(字幕版)」を観ました。2021年2月に全米で配信された作品で、日本では翌年に劇場公開されています。歌姫ビリー・ホリデイの人生を描いた伝記ドラマでタイトルの通り、合衆国の名の下に連邦麻薬局が彼女と対立していく物語です。

何故、今この作品を観たのか。それは昨日のピーター・バラカンさんの出前DJ「抗議する音楽」で彼女の代表曲が選ばれていたからです。もちろんこの映画のお話も。

10年に渡る執拗な連邦麻薬局の捜査。彼女自身が薬物に溺れる理由もありますが、それだけでなく彼女を嵌めていく違法捜査までする始末。何故、彼らが執拗にビリーを追うのか。それがピーターさんの解説の通りに描かれていきます。

その理由は「奇妙な果実」という曲にあります。1940年代、彼女は全米で人種を越えた人気シンガーでした。まだ公民権運動が始まる僅か前にして、黒人リンチ事件は横行していたアメリカ。”リンチされ巨木に首吊りされた黒人”「奇妙な果実」とはその情景を歌った曲で麻薬局長官のアンスリンガーが彼女の歌と影響力を恐れていたのです。

アンスリンガーの裏に誰か(あるいは権力が)居たかはこの映画では描かれません。ただ映画の最後でケネディ大統領から表彰される姿に違和感がありました。やはり当時、ビリー・ホリデイに対する真実が世間に広く知られなかったからなのかもしれません。

この映画ではアンスリンガーが放った黒人捜査官ジミー・フレッチャーとビリーの関係性にも触れています。幼少期に受けた性被害、大スターゆえの孤独、パートナーとの破綻と彼女の心中が穏やかで無かった事、薬物とステージ(そしてジミーも)がその発散場所だったのでしょう。ただ劇中のビリーの姿を見れば単に彼女を礼賛するわけでなく、薬物の恐ろしさも十分に伝える作品です。

この作品は伝記ものであると同時に音楽映画です。そうした重い流れを主演のアンドラ・デイが自ら歌うビリー・ホリデイの楽曲がとにかく素晴らしいです。音楽、演奏の質も高く、カーネギーホールや大ホールでのパフォーマンスは臨場感が高く思わず観入ってしまいました。

実はAmazonプライムビデオでの会員無料配信は今日いっぱいを持ってお終いです。ただ公民権運動、BLM運動と今に至るアメリカの歴史を知る上で非常に重要な作品だと思います。

251005_02

|

« 「エヴァンゲリオン30周年特別番組「残酷な天使のテーゼ」時代も国境も超えて」を観る | トップページ | 第104回凱旋門賞をネット観戦する »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「エヴァンゲリオン30周年特別番組「残酷な天使のテーゼ」時代も国境も超えて」を観る | トップページ | 第104回凱旋門賞をネット観戦する »