「正体」を観る
今日は仕事帰りに横浜流星主演、藤井道人監督の「正体」を観てきた。「ヴィレッジ」でもコンビを組んだ二人が描く令和版「逃亡者」。ある事件に巻き込まれ、死刑宣告された主人公鏑木慶一が脱獄。そして逃亡、転々とする中で人々と出会い、ある事実を突き止めていく。
物語はシリアスでかつヒューマニズムに訴える。袴田事件のように冤罪は警察のメンツの現れ。それで人生をぶち壊されてしまう怖さ。いい人役の多い松重豊が演じる警察幹部が冷徹に事態を収めようと、山田孝之演じる部下を一喝する。そんな山田の横顔が「十一人の賊軍」同様、三船敏郎に見えてくる。
ただ監視社会、SNS時代にこの逃亡が成り立つかという疑問。一方で巧妙に次々と他人になりすましていく主人公。雇い先は身分証明はちゃんとできるのかとか、簡単に雇ってしまう企業とか、物語のプロットの一部につい無理な点を感じた。そこが本作のブレーキとなってしまっている。
また被害者家族の発見者を問い詰めるシーンが個人的にキツかった。PTSD発症者相手に必死、ウチの母親の事を見ているような。藤井道人監督の手堅い演出が光るもヒューマニズム、情に訴える作りがクライマックス以降ズルズル続くところもマイナスに感じた。
個人的に良かったのは主人公の道程を追い続ける山田孝之が、現場で詰問中に起きた情景を見つめるシーン。ワンカット風にシーンが繋がって興味深い。横浜流星の主人公もさることながら、森本慎太郎、吉岡里帆、山田杏奈ら主人公と接する面々の演技も良かったと思う。
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