Netflix「極悪女王」を観る
Netflix「極悪女王」(全5話)を観終えた。鈴木おさむ脚本・プロデュース、白石和彌総監督による実録ベースのドラマシリーズ。ビューティペア解散後の80年代女子プロレスブームを支えたダンプ松本、クラッシュギャルズらレスラーの成長と当時の格闘技界を描いていく。
世評、噂に違わない傑作。当時の女子プロレス、ブラウン管を通して見た世界が見事に再現されている。その上で興行を牛耳る松永兄弟、ブックを始めとした興行とその裏事情が生々しい。そして人間ドラマ、戦いの中でレスラー同士の関係性と変化の過程が興味深い。
話の軸はデビュー同期の松本香=ダンプ松本、長与千種だが、ライオネス飛鳥にクレーン・ユウ、大森ゆかり、後輩のブル中野、先輩であるジャガー横田やデビル雅美、ジャッキー佐藤たちの物語。ブックに踊らされていた彼女たちが自ら殻を破っていく姿が時代の潮目を感じさせる。
ダンプ松本の誕生は本人の意志の現れだが、それが松永兄弟の想像を超える事になる。興行主にできる事はマッチメイクとその結末まで、試合自体はレスラーたちに委ねるもの。肉体と魂のぶつかり合いに入る余地はない。だが当時は男性、組織上位の興行ゆえジャガー横田のような行動が精一杯だったと思う。
その壁の崩壊は大阪城ホールでのダンプ対長与の髪切りデスマッチ、その後のダンプの引退試合に集約されている。それらの再現は記憶の断片と重なり、演者の表情に呼応し感情を揺さぶった。第3話のダンプ誕生前後の心情と変化を知るとよりその思いは強くなる。
それを生んだのも演者、スタッフの努力。ゆりあんら全ての出演者が体作りを含めて再現。試合の再現はもとより、入場時のダンプのふてぶてしさ、血まみれの長与の表情は瓜二つに思えた。女性陣だけでなく松永兄弟を演じる村上淳、斎藤工、黒田大輔や阿部四郎を演じた音尾琢真も好演。
また「止められるか、俺たちを」「仮面ライダーBLACK SUN」で時代描写に実績ある白石組が手掛ける80年代も素晴らしい。なおアパート絡みのシーンで登場のクルマは実話と離れたある意味のちの伏線。また名が売れたダンプの愛車がフェアレディZ31型。とにかく出てくるクルマはどれも懐しかった。
当時興行をバックアップしたフジテレビ(劇中はトヨテレビ)との蜜月関係も描かれるが、それをも破壊したダンプ松本の存在感は圧巻。ちなみにデイリースポーツは実名なのにフジテレビの名を使わなかったのか、使えなかったのか。そのせいか全女中継のテーマ(いい曲だよ)が流れなかったのが唯一残念に思う。
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