「まる」を観る
今日の一本目は「かもめ食堂」の荻上直子監督・脚本の映画「まる」を観てきた。人気芸術家のアシスタントとして働く主人公沢田が、怪我をきっかけに失職するも描いた円相(まる)が世間の人気となっていく。そんな主人公の戸惑いをシュール、かつシニカルに描いたファンタジー。
タイトル通り、誰もが見ない日は無い「まる」がテーマとあって親しみ易い。描いた丸に蟻、隣人や元同僚のセリフや行動を通して格差社会も皮肉る。また象徴する食として寿司が出てくるが、ここで言ってるのは回転寿司では無いのだろうな。
そんなこの作品はまさに荻上監督のアート。創作の源泉、芸術の持つ深み、流行を巡る社会構造を何となーくこの映画を通して伝える。この「何となーく」が重要でちょっとした謎、解らない事があってこそ興味を惹くわけで、この作品の塩梅は絶妙で自分にはハマった。
テレ東の「開運!なんでも鑑定団」を見ていて思うが、鑑定にそれなりの指標はあるだろうが、興味のない人には価値ゼロだし、何が価値を見出すかわからない。沢田が激オコを放った作品の顛末は本作の真骨頂だろう。またそこが面白い。
「侍タイムスリッパー」と違い、この作品は当て書きっぽい。観客はどのキャラも俳優さんの土台を元に観ている事に気づく。主人公を演じた堂本剛(音楽も共同担当)の不思議、アート感も合っている。荻上作品初見参の綾野剛も他作と違いコミカルで達者な演技が興味深かった。
追伸.作品の出来と関係はないが、普通はこの作品のようにキャストありきで映画は作られるわけで、「侍タイ」 は突然変異、最高の化学反応から生まれた作品だと思い知らされた。
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