「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」を観る
今日は盟友N氏と「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」を観てきた。傑作「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン監督、ポール・ジアマッティ主演コンビによる人間ドラマ。本作でメアリーを演じたダバイン・ジョイ・ランドルフが今年の米アカデミー助演女優賞を受賞した。
ANN0で佐久間Pもコメントしていたが、冒頭から1970年に拘った作りが目をひく。銀塩感だけに留まらず、ノイズ感まで再現。アンガスを演じたドミニク・セッサら生徒たちは今風のルックスに在らず。車に風俗、ファッションに至るまでスクリーンに映る全てはその時代にタイムトリップさせてくれる。
そんなクオリティに物語が負けていない。頑固で皮肉屋の教師ポール、クラス内で馴染めていないアンガス、ベトナム戦争で息子を亡くしたメアリーら、心にキズを持つ者たちが物語を紡ぎ、SNS時代にはない交流が暖かい。後半は「サイドウェイ」よろしくロードムービーの様相で進んでいく。
芸達者ぶり、監督の当て書きに応えるジアマッティの演技と凄み。今の格差社会を映したような毒の効いたセリフも刺さる。ドミニクとの深い交流の後でのポールの男気は彼の人生を通してみれば当然の行動。冒頭の憎たらしさが可愛げに変わるラストシーンも清々しく映る。バックに流れる70’s音楽も心地よくてサントラが欲しくなる。
セリフだけに頼らず、語り過ぎず、それでいて心に沁みる映画でアレクサンダー・ペイン監督の演出が素晴らしい。鑑賞後に「この映画を好きな人に悪い奴はいない」とN氏が呟く。疲れた時代を生きる身に癒しのような今年屈指の名作だ。
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