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2024/03/31

「落下の解剖学」を観る

今日は「落下の解剖学」を観てきた。昨年のカンヌ映画祭でパルムドールを、今年の米アカデミー賞で脚本賞を受賞した法廷スリラー。山小屋に住む夫の転落死から小説家である妻サンドラに容疑が掛かる。そして状況を知るのは視覚障害を持つ息子のダニエルだけ。法廷は容赦なくそんな二人を晒していく。

事前、2時間ほどの上映時間と勘違いしていたが、きっちり2時間半以上の作品。冒頭から50centのP.I.M.P.がやかましい。まず観る側が妻サンドラに疑いを持つのは当然。だがこの作品の面白いのは犯人捜しだけでは無い事。途中から彼女の立場を危うくする事態が明かされていく。夫婦とは何か。夫婦間での痛みの共有、偽りの共感等はとても他人事に思えず、時間を忘れ物語に引きこまれていった。

舞台であるフランス語が大半ながら、ドイツ人であるサンドラが共用語として夫と英語で会話する。それも二人の間の特殊性。あえて彼女は法廷でも英語で話す。英語とフランス語で交わされるやり取りも絶妙。しかも不利な立場に陥りつつ、けっして引かないサンドラを演じるザンドラ・ヒュラーの見事な演技。ある種女性の持つ怖さを体現している。

もう一つ物語に寄与しているのが息子のダニエル。この作品はあくまで家族の物語。夫婦に亀裂が起きた理由の一つはダニエルの事故だし、カオスと化した法廷で何が正しいのか見つめ直すきっかけも彼。父親とのやり取りを克明に再現していく。そんな中である事実を示すダニエルの愛犬がなかなかの名演。

また法廷劇として面白くしているのが、検事役のアントワーヌ・レナルツ。法廷に女子供は関係なし(判事がダニエルに配慮する場面はあったけど)。ただそれは監督・脚本が女性であるジュスティーヌ・トリエである事が大きいのかも。作り手が同性だからこそ劇中とことんサンドラを追い詰める。そんな「落下の解剖学」は法廷劇の傑作だ。

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