「ティル」を観る
今日は映画2本目、「ティル」を観てきた。1955年アメリカ、ミシシッピー州で起きた黒人少年惨殺事件とその裁判を追った実話。夏休み、無邪気な14才の息子をミシシッピーへ送り出した母は無惨な姿で再会する事に。タイトルの「ティル」とは母親メイミーとその息子エメット、二人の苗字を表す。
アメリカにおける黒人差別は21世紀になってもBLM運動のように決して終わっていない。常に映画界はそうした動きに呼応するよう世に作品を送り出す。詳しい事情を知らない日本人にとってこの作品は貴重。メイミーたちの住むシカゴと南部のミシシッピーの差別とその温度差。この作品で描かれた法廷の出来事をみて当時の無力感に覆われる。
裁判の後、母メイミーは公民権運動前進の一翼を担う事になる。この映画の意義とは悪しき歴史を忘れない、そして繰り返さない事。前半は淡々と、エメットを襲う悲劇を史実に沿って描くため、過剰な演出は皆無。「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」を観た時にも思ったが、そこがつらいところ。そのせいか、リンチする側の顛末(テロップのみ)があまりに衝撃的だった。
メイミーを演じたダニエル・デッドワイラーの熱演に母の強さを感じさせる。子育てと息子との関係性、その上で息子を守れなかった悔い、その思いの丈がセリフに溢れる。特に多くの人を前にした演説は彼女の演技共々とても力強かった。またエイミーの母を演じたのがウーピー・ゴールドバーグだったとエンドロールで知る事になる(彼女はプロデューサーを兼任)。
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