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2023/12/29

「ほかげ」を観る

今日は盟友N氏と映画納め。塚本晋也監督作品「ほかげ」を観てきた。終戦直後を舞台に少年の目を通して戦争の傷跡が描かれていく。塚本監督が「武田砂鉄のプレ金ナイト」に出演した時のコメントを思い出しながらの鑑賞。「野火」と対を成し、あぶり出される戦争の惨状が生々しい。

まず出演者の演技に圧倒される。「ほかげ(火影)」のタイトル通り、僅かな光に映る表情。前向きな朝ドラ「ブギウギ」での演技とは違い、趣里の飢餓感が宿った目に釘付けとなり、生きるために精一杯の思いが強く伝わってくる。一緒に暮らす事になる少年に少しずつ心を許すも、身に起こるエピソード共々現実を突きつけられていく。

もう一つ物語の柱となるのが、森山未來演じる復員兵。少年を連れ出し飄々と過ごす男が背負うものとは。彼に限らず戦争とは多くの死、人の心に傷を残しているわけで戦争経験世代が少なくなる中、その想いが消えていくのは怖い。しかも森山が思いの丈をぶつける姿は単なる復讐に思えない。きっと何も変わらない今へ思いをぶつける監督の気持の表れかもしれない。

そんな二人のエピソードを塚尾桜雅君が演じた少年が繋ぐ。純真な目、その視線の先で起きた現実の数々。そして物語は一つの成長をもって終わっていく。闇市にあるのは賑わいで無い。生きるための術、欲がぶつかる。その一方で精気を失う者たち。利益を享受するひと握りの人々。戦争が生むのは常にそんなものだから。

この映画で戦争とは醜いものと諭す。英雄礼賛は微塵もない。そう語るためにあらゆる描写がリアル。美術が素晴らしく窓や壁の汚れ、布団の湿気まで伝わる。だから演技が溶け込んで時代とテーマが映る。監督のシナリオ以上にキャストの表現したものは大きいのだなと(ラジオでもそんな事を言っていたような)。

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