「ナポレオン」を観る
今日は映画の日なのでリドリー・スコット監督最新作「ナポレオン」を観てきた。御年86歳ながら毎年のように新作を送り出す巨匠。近年玉石混交で当たり外れはあったものの、得意の歴史劇とあれば観るしかない。主演はオスカー俳優ホアキン・フェニックスを配した2時間半を超える大作。この映画もApple印である。
ナポレオンといえば「早野凡平」に下町の.....である「いいちこ」で知る世代。映画なら「バンデッドQ」や「ビルとテッドの時間旅行」に出てくる彼の姿が頭に浮かぶ。背が低くてエゴイストな男という印象。本作のナポレオンはそれらに近い面もあるが、史実に沿って彼の人間性に迫っていく。
約25年に渡り国を率いてきたナポレオン。ハリウッド産ゆえの英語劇への違和感も、国の外から冷静にその人生を描くためとすれば正しい。フランス革命後に軍より台頭し、国への思いがやがて自身の野望に転化されていく。彼を利用しようとする権力者たち。だが無双する皇帝もロシアとの戦いで大きな転機を迎える事になる。
僅かに感じる母親への思い、そして妻ジョセフィーヌとの関係性。その一途な愛情も後継者作りのために崩れていく。ジョセフィーヌは悪女な側面を見せるが、「MI:デッドレコニング」のヴァネッサ・カービーがとても魅力的に演じており、ナポレオンが翻弄されるのもよく分かる。彼と彼女の顛末が物語のもう一つの軸とした愛情劇となっている。
ただ主人公ナポレオンに対して「最後の決闘裁判」のような感情移入に至らなかった。知略を披露した前半に比べ、落日となる後半は衰え、大きな犠牲と私情の表れた史実がその気持ちを妨げる。それだけホアキンの名演と物語がよく出来ている表れ。そしてこの映画と今世界で起きている戦争の本質は何も変わっていない事に気づく。
沢山のエキストラを使った合戦シーンの迫力はさすがリドリー・スコット。これこそ映画館で観るべき。冒頭から断頭台が出てきてリドリー版「首」の様相も(でも「コントは始まらない」)、その血生臭さに何度も手で目を覆った。公称身長173cmのホアキンが撮影マジックでナポレオンを演じるのも見どころ。前半と後半のその姿の違いも比べて欲しい。騎乗した馬の体格も違うんだよね。
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