「こんにちは、母さん」を観る
今日は映画の日。そこで公開初日となる吉永小百合主演、山田洋次監督作「こんにちは、母さん」を観てきた。現在の東京下町を舞台に足袋屋を営む母と大会社の人事部長である息子を巡る人情劇。そんな母を吉永、息子を大泉洋が演じる。
山田監督らしいセリフの応酬と小ネタにクスっと笑う。前半は達者な大泉にばかり目が行くが、気がつけばちゃんと物語の中心に吉永小百合が居る。一つの親子観に自分らしい生き方を求めていく二人の姿を描いている。彼らにはちょっとほろ苦いラストだが、それもまた人生。そして作中で様々な人生が交錯する。
そこで欠かせないのが二つのエピソード。大泉演じる人事部長に課せられたリストラ、もう一つは吉永がボランティアで参加するホームレス支援。物語は喜劇だが、リアルな部分が挿入される。早期退職、リストラは身近であった出来事だし、今の日本の実態。ホームレスだって負の側面。この映画でそれ以上の訴えは無いが、伝える事に意味がある。
だからといって説教臭さよりも正直な視点。そこに存在感溢れる田中泯と吉永に向けた率直なセリフが可笑しい。そして橋の上、戦中世代の山田監督の気持を映したような言葉。戦後世代が束になって偽りの戦後を語っても敵わない。こうしたリアルさの匙加減に笑いのオブラートこそ山田監督の真骨頂に思う。
その笑いに宮藤官九郎が参戦。監督から撮了時に「この作品は君に掛かっている」と言われるも「もっと早く言って欲しかった」というクドカン。"よC永小U合"からせっかちだと言われた山田監督。そんな二人のエピソードをクドカンのラジオ「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」で聴いた後だから余計に可笑しく、鑑賞中にカメラの向こうの監督の姿が見えていた。
| 固定リンク
コメント