「アラビアのロレンス/完全版」【午前十時の映画祭13】を観る
今日は午前十時の映画祭で「アラビアのロレンス/完全版」を観てきた。オリジナル版は1963年公開の第35回米アカデミー賞作品賞他を多数受賞した名作。その後スピルバーグやスコセッシが制作に名を連ね、デヴィッド・リーン監督ら自ら1988年にリストアされた完全版をさらに高画質化して今回4K上映された。
物語は20世紀初頭、アラビア部族の下に派遣されたイギリス将校のロレンスが、部族の信頼を得ながらオスマン帝国軍を破っていく姿を描く歴史劇。だがその志も本国イギリスとやがて力を付けた部族たちとの間で悩む苦しんでいく。インターミッション(休憩5分)を挟んだ全227分の長編。
冒頭、そしてエンディングのエピソードだけを観るとロレンスの悲劇。ただそうならないのはモーリス・ジャールの優雅な音楽と圧巻の映像(共にアカデミー部門賞受賞)によるところ。砂漠や風景の美しさ、その中で生まれたヒーロー。争い合う部族を肌の違うロレンスがその行動で束ね颯爽とした姿。CG全盛の今と違い、生の迫力が伝わってくる。
ただ彼をヒーローと呼ぶには複雑だ。文化と戦火、大国の利権がぶつかり合った時代。視点を変えればロレンスはヒールにもなる。オスマン帝国軍の列車を襲うロレンスたち、銃撃と略奪する姿はその美しい衣装と反し、乱暴に映る。アンソニー・クイン演じる族長の一人が強欲のために怒りをぶつけるシーンにいい気分はしない。
今回程、インターミッションの意義を感じた作品はない。ここで物語は成功から暗転に向かっていく。それだけでなく明らかに休憩として意味を成す。さすがに4時間近い作品を見続けるには集中力が続かない。それでも後半、政治劇的な流れと当時のスローテンポな演出に観るのが辛くなったのだけれど。
この作品を劇場の大画面で観る機会はそうそうない。大量の人馬、エキストラを投入したスペクタクル。いつも通り少し離れたセンターに陣取ったが、この作品はもっと前で間近に大画面を感じたかったなと思う。そして主演のピーター・オトゥールと白のコスチュームの美しさといったら堪らない。
追伸.
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