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2023/06/01

「パリタクシー」を観る

今日の二本目はフランス映画「パリタクシー」を観た。92才の女性客とタクシー運転手が心を交わす人間ドラマ。観る前はタイトルのせいで王道のロードムービーかと思ったが、実際は少し違う。女性客マドレーヌの人生を映しつつ、時代の生んだ障害や彼女の過去が描かれていく。

タクシーは人生交差点。ただほとんどの人には僅かな時間でしかない。だがこの映画は見ず知らずの二人が交流を深める様が面白い。特にマドレーヌのあるエピソードがシャルルの心に刺さった時、物語は大きく動き出す。その行為に驚くも当時のフランスの世情が明らかに。そして怒涛の彼女の人生が語られる。

フランス、タクシーといえばプジョーを最速でぶっ飛ばす映画を思い出すが、こちらはルノーのコンパクトSUV。運転もやさしい。年老いたマドレーヌを気遣うよう、緩やかにパリの街を巡る。彼女の思い出を振り返るように。そんな中、シャルル絶対絶命のピンチをマドレーヌが救うエピソードが可笑しく可愛い。

それもマドレーヌを演じたリーヌ・ルノーの存在感の成せる技。表情に秘めた波乱万丈、それを包み込むようなユーモアと優しさ。もちろん彼女がトップロール、フランスでは国民的歌手だという。シャルルを演じたダニー・ブーンも出しゃ張らずに心を開いていく姿が好感。

最後の最後、ありがちな結末ではあったものの、去る者の気持ちなら当然とも思える。そこに至る経緯にも納得。彼女にとって戦わなければならなかった時代があったからこそ、今を大事にしたい。90分ほどの小品だけど満足感は高かった。

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