「ビデオドローム 4K ディレクターズカット版」を観る
今夜は「ビデオドローム 4K ディレクターズカット版」を観てきた。「スキャナーズ」「ザ・フライ」「クラッシュ」等のデヴィッド・クローネンバーグ監督・脚本による1983年公開のカナダ映画。日本公開は2年後の1985年まで待つ事になる。今回は4K化によるリバイバル上映となった。
クローネンバーグ作品といえばグロさが特徴だが、ただそれよりも難解さがクセになる。特に本作はビデオドロームと呼ばれる過激な番組(海賊放送)を軸に主人公マックスの現実と幻覚の境界が失なわれていく姿が描かれる。ビデオドロームを利用しようとする組織と対峙するマックスだが、やがてその境界は生と死にまで及ぶ事になる。
劇中のセリフの通り「ビデオドローム」とは哲学でもある。メディアの与える刺激に人々は麻痺し、更に強い刺激を求め続ける。その先見性、本作の警鐘は30年以上経った今も変わらない。一見難解に思える物語もその裏はシンプル。だからこそ惹かれるのかもしれない。
惹かれるもう一つの要素はクローネンバーグの様式美。幻覚の中、テレビに映るニッキーと興じるマックス。赤を基本にした美術セットは後年の「戦慄の絆」にも相通じる。さらに幻覚を具体化する特殊メイク、80年代といえばリック・ベイカー。そのビジュアルと有機的な動きはCGにない痛みと恐怖を感じた。
徐々に壊れていくマックスを演じるジェームズ・ウッズ。有機的な融合と反して無機的になっていく表情。赤いドレスの女、ブロンディのボーカルでもあるデボラ・ハリーのエロさ。「ベネデッタ」のバーホーベンといい、本作のクローネンバーグといい、木のオモチャが好きだなぁ。もちろんそんな二人が大好きなんですけどね。
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