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2023/05/13

「お葬式」を観る

今日は「午前十時の映画祭」で昨日から上映の「お葬式」を観てきた。1984年公開の伊丹十三監督の映画第一作。自身の体験をモチーフに映画化したと記憶する。コメディーではあるが、観る側の笑いのツボを軽く突くような作り。今となって我が年齢もこの作品の主人公たちと変わらない立場となった。

40年近く前の作品ながら今観ても新鮮。既に伊丹監督の女シリーズにも相通じるフォーマット、画作りを実感できる。マニュアル的な視点で描いた昭和のお葬式映画。今では葬式あるあるがコントになる事はあるがその先駆け。中盤挿入された浅井慎平撮影の白黒フィルムがほのぼのして可笑しい。足の裏の映像も映らぬ表情を巧みに表して笑える。

女シリーズ同様、「あまちゃん」の夏ばっぱこと宮本信子がメインの一人だが、山崎努演じる夫で俳優の侘助が主役で伊丹監督の立場。さらに伊丹映画の常連となる面々で紡ぐ群像劇となっている。そして昭和の名優たち、大滝秀治、笠智衆、藤原鎌足らの唯一無二の存在感とセリフ回しが堪らない。

昔ゴールデン洋画劇場で何度か放送されていたが、その時はお葬式というテーマが程遠く、最後まで観る事は無かった。ただその中でも侘助と愛人の描写だけは覚えている。本作に限らず、伊丹監督の作品では食と性の描き方が一貫している。両者とも生きていく上で欠かせないものだという印象を受ける。

平成、令和と進んだ今はマニュアルからシステム化された葬儀に変わったと実感。この映画のような自宅葬はほぼ見られなくなり、大手経営の葬儀場ばかりになった。ただシステム化されようが葬儀が人間交差点である事に変わりが無い。そんな令和のお葬式を伊丹監督ならどう撮るだろうか。

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