「マルサの女」【午前十時の映画祭13】を観る
今日一つ目は午前十時の映画祭で「マルサの女」を観てきた。1987年公開の伊丹十三監督作品。「お葬式」「タンポポ」と共演してきた宮本信子と山崎努が三たび。今度は凄腕査察官(最初は税務署調査官)演じる宮本がラブホを手広く経営する男と対決する。続編「マルサの女2」は劇場で観たが、本作をスクリーンで観るのは初めて。
この作品冒頭のエピソードを観て公開からの時間差を痛感。ゴールデン洋画劇場で何度も観た「マルサの女」もコンプライアンスで雁字搦めの今、ノーカットで放送できまい。おっぱいとタバコの煙の出る数だけ昭和を感じる。時はバブル夜明け前、金満日本の影の部分を映していく。それでいて最初から最後まで痛快なエンターテイメント。
その一端を担うのは本多俊之の音楽。昔見たメイキングか何かで冒頭、足の悪い権藤(山崎努)が踊るところを音楽無しで撮っていたと聞いた。それにピタリと合うのがご存知「マルサの女」のテーマ。この曲の持つ個性の凄さで映画全体のテンポを作っていく。今でも伊丹作品のベスト盤を愛聴、映画を観に行く数日前から仕事中も脳内再生されていた程だった。
この作品に時の流れを感じるのはコンプライアンスだけでない。ショルダーフォンにDOS時代のコンピュータ画面、スーパーマリオが登場。書類の処分は「メモを食べる(エンドロールの役名「メモを食べる女」は今も笑える)」か「燃えるゴミの日」に直行。当時はシュレッダーが無かったのだ。このスリリングな展開も今なら描き方はだいぶ変わるだろう。
それと「お葬式」を超えるキャスティング。ベテラン小沢栄太郎や小林桂樹、大滝秀治がいいよな。パチンコ屋の店長、若い伊東四朗さんが1エピソード一人で持っていった感と芦田伸介に組長を演じさせるところなんて凄い。今回も何度も観たシーン、刷り込まれたセリフにも笑ってしまったもの。コーヒーの件のテンポの良さと言ったら!
面白い映画は時を超えて面白い。公開当時、ハリウッドリメイクの話(シガニー・ウィーバー主演)があったが、いつの間にか立ち消えていた。その話が実現していたら時代は変わっていただろう、その後の伊丹監督を巡る圧力(陰謀)は削がれていたのかもと勝手に想像。伊丹十三さんが今の日本映画界に居ないのは寂しい。でもこの作品は今も傑作だ。

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