「ベネデッタ」を観る
今日は「トータル・リコール」「ロボコップ」等で知られるポール・バーホーベン監督作品「ベネデッタ」を観てきた。17世紀イタリア、修道院を舞台に幼き頃にやって来たベネデッタはある出来事を経て聖女と崇められていく。だが彼女にはある秘密が。そしてそれによって窮地に追い込まれてしまう。
物語は宗教を一つの柱に、彼女の秘密を巡るもう一つの柱が絡み合う。ベネデッタの言葉は神の啓示か、妄想の生んだ虚言なのか。目の前で異を唱える者がいれば、力強い言葉で説き伏せる。だが教皇大使の来訪で混乱する町で人々を先導し、自らの存在を見せつけていく。全編ベネデッタを演じたヴィルジニー・エフィラの演技に圧倒される。
そのもう一つの柱が強烈なエロティシズム。バルトロメアに導かれるように身を委ねていくベネデッタ。声がこだまするスクリーンに釘付けとなった。これは当然のR18+。暴力描写(他作に比べれば随分と控えめだが)と共に手抜き無しのバーホーベン節が炸裂する。しかもこの時代におけるタブーこそこの映画のテーマの一つでもある。
ルックス共々ベネデッタと対照的なバルトロメアを演じたダフネ・パタキアも良かったし、何より相変わらずひと癖ありそうな雰囲気のシャーロット・ランプリングは抜群の存在感を示す。そして教皇大使は何処かで見た顔と思えば「マトリックス」シリーズのランベール・ウィルソン。その権力をもってベネデッタを追い詰める。
時代との対峙となれば、内容の違いはあれど「最後の決闘裁判」を思い出す。ほんの数十年前までその価値観に大きな変わりはなかったのだ。科学が及ばない信教の時代、ベネデッタの真意は本人しか判らない。ただそんな時代にこれほど、いろんな意味で強烈な存在が居た事を思い知る。そしてこの作品を成立させたポール・バーホーベンにはとにかく恐れ入った。
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