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2022/11/05

「仮面ライダーBLACK SUN」を観る

Amazonプライムビデオで「仮面ライダーBLACK SUN」(全10話)を観た。仮面ライダー生誕50周年記念作品として白石和彌監督の下に製作。西島秀俊、中村倫也を主軸に力の入ったキャスティング。さらに音尾琢真、濱田岳ら白石組を加え、白石監督らしい人間ドラマが展開していく。

オリジナルとなる「仮面ライダーBLACK」はリアタイしていたが、実はあまり覚えていない。それでもBLACKとシャドームーンのキャラの強さは記憶に残る。石ノ森章太郎先生が直接手掛けた最後のライダーだし、今では忘れ去られた改造人間の苦悩、それに対する運命が描かれていた。

今回の「仮面ライダーBLACK SUN」はそれら要素を復活させ、「改造人間=怪人」に今の社会問題を織り込んだ。政治不信、腐敗に対する露骨ともいえる描写が物議を呼んでいる。でも勇気を持って取り組んだ事を支持したい。今は何でもアンタッチャブルで忖度ばかりな世の中だから。

またそこに潜む人間の弱さと残酷さはこれまでの白石作品に共通するテーマなので、本作で描かれるのは必然。海外系配信(アマプラ)という強みでもある。

物語は70年代と現在を中心に展開。特に好きなのは70年代の描写。「止められるか、俺たちを」でもタイムスリップ感があったが、ここでも手を抜いたところはない。しかも光太郎と信彦がダブルライダー(1号、2号)の雰囲気を醸して心憎い。中村蒼のキャスティングも絶妙だった。

堂波一族をルー大柴に演じさせたのは確信犯的。ルーさんをラスボスに据えたのは面白い。ギャグとシリアスの狭間とバランス。しかも丸々あの人の語り口をコピーさせた。さらにあの人一族のエピソードを重ね、怪人の看板に替えただけ。またそこが一部の人が騒ぐところでしょうけど。

そうした物語を最後まで楽しむ事ができた、いや楽しい話ではないけれど。大人向け、R指定とあって一見、攻めた物語のように思える。でも正攻法過ぎて想像以上の趣きには至らなかったような。ラジオで伊集院光さんが言っていたけど、子供番組の寸止め描写(大人の要素を散りばめる)こそ実は技量が問われるのではと。西島秀俊の「子供たちが観られる作品に」というコメントも実は的を得ているのでは、と。

それでもコメディーリリーフの音尾さんや濱田さんあってのバランスも、しかも白石作品らしい役者を活かした群像劇で良かった。最終話冒頭の仕掛けに思わず唸らされたし。立ち姿ですぐに判ったよ。一話一話のバランスも良かった。何より西島秀俊、中村倫也の二人が完全にライダー、シャドームーンだった。石ノ森作品リスペクトの見得の切り方、覚醒には参った。これは日本らしいマーベルとは違うベクトル。

物語もう一つの主軸である葵は今を表す一人。最後まで観るとあのSF作品の強い女性の姿が重なる事に気付く。彼女にとって第5話がターニングポイントとなるが、正直そう来るかと思ったものの、物語が終わってみると納得。演じた平澤宏々路と西島秀俊の関係はまさにあの映画の再起動ジェネシスそのものだったなぁと。

追伸.
二人がノーヘルでバイクに乗るのも見どころ。やっぱライダーなんだからね。でもロケ地の制約、苦労が垣間見える。同じ事をトム・クルーズが演ったら、本物の道路を封鎖して絶対にそんな事を感じさせないだろう。それだけ日本政府の映画産業への規制が厳しいとも。隣国の映画と比較してそこがちょっと悲しかった。(おしまい)

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