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2022/11/23

「ある男」を観る

今日は「ある男」を観てきた。妻夫木聡、安藤サクラ共演の社会派サスペンス。事故死した夫は全くの別人だった。弁護士である城戸はそんなある男の過去を調査する依頼を受ける。TwitterのTLでも多く取り上げられ、気になって観る事に。なるほど、物語が進むごとに深く考えされられる作品だった。

生まれてきた境遇で逃れられないもの、変えられるもの。逃れられないものが圧倒的に多いが、そんな社会観を城戸と調査するXを通してあぶり出されていく。特にXを巡る境遇こそ最たるもの。どんなに正しく生きても世間が許さない社会。鑑賞中、胸に抱く思いも社会に戻れば偽善と見透かされるよう。それでも気付かないよりはいい。

社会はそんな世間体の多層構造物。それらを想起させるシーンもある。様々に生まれる差別と現実。もう一つの「すばらしき世界」。実際、城戸も一筋縄ではいかない出生。義父母との会話、ある人物との対峙のたびに突きつけられる。そんな城戸だからこそ、Xの調査に深入りしていくのも解る。やがて訪れる家族の絆の対比、ファーストシーンと終幕が繋がる瞬間が堪らない。

巧みな演者が集まって群像劇として面白い。狂言回し的な主人公、城戸を演じた妻夫木聡の安定感。そして僅か3年9カ月ながら、時の流れを感じる安藤サクラの演技。同じ時を過ごした窪田正孝の変化も素晴らしい。そしてそれ以外のシーンも。でんでんさんはさすがの貫禄。意外な清野菜名の場末感も良かった。

登場人物を追うフレームに映画と意識させるアップの少ない画作り、僅かながら背中を映すカットも印象的。これはテレビサイズでは伝わらない。シリアスで重い物語ながら、小籔さんのコメディーリリーフぶりにニヤリ。そんなバランスも見事。とても映画らしい作品でした。オススメ。

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