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2022/11/05

「レイジング・ブル」を観る

今日は午前十時の映画祭で「レイジング・ブル」を観てきた。1980年公開のアメリカ映画。ロバートデ・ニーロ主演、マーティン・スコセッシ監督コンビがボクシングミドル級チャンピオン、ジェイク・ラモッタの半生を描く。

学生時代、「ゴッドファーザー」シリーズと共にビデオレンタルしたのがこの「レイジング・ブル」。30年近く前の事ゆえにボクシング以外のストーリーをあまり覚えていなかったが、その理由は今日改めて判った気がする。それはこの主人公への感情移入が皆無だったからだ。

トレーニングシーンはほぼないが、ボクサーとしてのジェイクの資質は試合シーンで垣間見える。打たれ強さに腕っぷしの強さを最大限に活かし相手を追い詰めていく。そんなミドル級チャンピオンになるまでの男なのに一切心に響かない。ジェイクは嫉妬、猜疑心の塊のような男。妻、弟にまで拳を出すのは観ていてツライ。

映画はそんな負の繰り返しを繰り広げ、やがて自滅していくジェイク。引退後にコメディアンへ転身するのは事実ながら笑えない。笑いのセンスは3回戦ボーイ、場末のバーで酔っ払い相手に立つ姿が痛々しい。ステージ前、シャドーで自身を鼓舞するのは彼のプライドなのだろうけど。

現役から引退後までのジェイクを演じたデ・ニーロ。デ・ニーロアプローチの真骨頂はこの作品だろう。ボクサー時代の締まった体と引退後の緩んだ姿。見た目の凄さもあるけど、感情の起伏の激しさを見事に表すデ・ニーロの演技。ソリッドな質感のスコセッシ演出と相まってクール。やはりこれはデ・ニーロを観るための映画。

自滅型の人生、しかも血みどろのボクシングシーンを踏まえると、モノクロ撮影の意味が見えてくる。粒子の粗い銀塩画質のフィルターによってソフトに思える。でもその本質は生々しい。映像設計、そのコントラストもこの映画の面白さかもしれない。

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