「川っぺりムコリッタ」を観る
今夜は地元の最終上映日に何とか間に合わせ、「川っぺりムコリッタ」を観てきた。松山ケンイチ主演、「かもめ食堂」の荻上直子監督作品。予告編ではコメディー色を前面に出していたが、実際はそれに留まらず。出所して社会復帰した主人公山田、彼と同じ平屋アパートの住民たちを通し今を生きる事を考えさせられる。
刺さる人に刺さる、共感を呼ぶ作品。働き、食べ、そして寝る。そして切り離せない生と死。そんな家族、仲間に至るまで淡々と荻上監督の世界観で描いていく。物語に救いを求めるというより、主人公を通して気付きを与えてくれる。終幕、主人公の接する一つの区切りに仲間たちとの葬列が作品タイトルを表すように夕陽と共に美しく映る。
登場人物たちは監督の当て書き*かと思う位、松山ケンイチ、満島ひかり、吉岡秀隆らそれぞれが役にハマっている。特にムロツヨシの危うさは、ユーモアのオブラートに演じた島田と彼が抱えてきた表情に垣間見えてくる。そして劇中の山田と島田の距離感の移り変わりはその人間関係を映した鏡に思えた。
(*監督インタビューを読むと当て書きでないそうです)
冒頭から生活感溢れる映像と音。この映画の中で食は重要。ご飯やキュウリを頬張るそしゃく音。中でも窓に向かって牛乳をぐい飲みする山田が印象的で、実はそれが彼に沁みついたアイデンティティー。もう一つ、重要なエピソードが鍋。鍋っていいな。鍋(劇中ではすき焼き)は仲間を一つにする。
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