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2022/09/19

鈴木忠平著「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book) 」Kindle版を読む

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鈴木忠平著「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか (文春e-book) 」Kindle版を読んだ。きっかけは最近読んだNumber(ナンバー)1058・1059合併号。予てからノムさんの著書は読んできたが、この号で似て非なる名将と比較されたのが落合博満。プロ野球界で大きな足跡を残しながら何処か皮肉屋の二人。特集を通して非なる部分にスポットを当てており、そこに出てきたのが本著だった。

日刊スポーツで当時中日ドラゴンズの番記者だった著者が、監督就任した2004年シーズンから2011年の退団までを追ったドキュメンタリー。落合の言動に納得の行くもの、行かぬもの。選手やスタッフ、読者まで著者同様に疑問を持ちつつ読み進めるも、最終シーズンに起きた出来事、その後を通してハッとさせられ、腑に落ちる瞬間が訪れる。

落合といえばロッテ時代、言わずと知れた三冠王、しかも三度。その後、セリーグで中日、巨人と活躍し、最後の球団となる日ハムまでオレ流と呼ばれるスタンスで選手期を過ごした。独特で広角に構えた神主打法はファミスタでよく真似した(実際の野球じゃないのかよ)。テレビのインタビューでは的確ながらも多くは語らず、そんな落合が気になってはいた。でもここ10年以上、あまり野球そのものを観ていなかったけど。

それでも本著で登場する2007年の日本シリーズは辛うじて観ていた。完全試合寸前の山井を9回交代、ストッパー岩瀬で逃げ切った落合中日。歓喜と落胆が入り混じった光景が思い出される。本著を読み、回を追って生まれる緊張感、それぞれの思いが交錯する。文章だとその情景に読む側の心が掻き立てられる。そんな緊張感も、今なら笑って当時を語る落合の姿がYoutubeで見られるけど。

著者の文章もあってまるで映画のような読後感。落合、番記者である著者、そして選手、スタッフにスポットを当てた光と影。様々な疑問が最終シーズン、ペナントレース終盤で解かれるように伏線回収されていく。個を大事にする監督が生んだプロ集団誕生の瞬間と別れ。理論的、合理的、プロ主義の落合がその瞬間を作ったのだ。まさかこの本で泣かされるとは思わなかった。映画好きの落合にして現実、映画を観ているような展開、結末だったのだろうなと推測。

これまで感情的になる事こそ全ての原動力と勘違いしてしまっていた。本著の中で闘将との比較、「フォルテッシモで感情をぶつける星野、落合はピアニッシモ」の比喩に納得。様々な決断を求められるプロ野球監督。どちらが説得力を持つか、決意にブレがないか推して知るべし。本当に落合の言動は無駄がない。そしてメリハリ。それでも先の通り、個の力の積み重ねで心は動かす事ができる。「技術を高めれば心を強くする」にも同意。

本著を読んで誰もが落合を好きになるかは別にして、改めてとても興味を持った。オレは落合さんが好きだよ。何とそんな落合さんがYoutubeでオレ流チャンネルを開設。もう監督はやらないと言ってるけど、野球は大好きなんだな。さかなクン同様、落合さんも求道者だから。Number(ナンバー)1058・1059合併号共々、本著はオススメ。ちなみにオレはヤクルトファンですけどね。




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