ジェイク・エーデルスタイン著「トウキョウ・バイス: アメリカ人記者の警察回り体験記 Kindle版」を読む
「トウキョウ・バイス: アメリカ人記者の警察回り体験記 Kindle版」を読んだ。タイトルにあるようにWOWOW、HBO共同製作ドラマ「TOKYO VICE」の原作。2010年に英語で出版されたが、本作は2016年出版の日本語版でKindleのみ。単なる日本語訳で無く、ニュアンスを伝えるべく著者の手で改めて日本語で書き下ろされたもの。読売新聞の記者時代を含めた回顧録である。
まず原作とドラマの違いは多い。こちらは実話であり、ドラマはエンターテイメント。とはいえドラマの主なキャラクターや背景等は原作に準じている事は判る。この原作は記者時代の背景を深掘り、さらに社会事件との関わり、そして暴力団、特に外国人を狙った人身売買に迫っていく。またジェイク以外、主たる人物は実名。反社に政治家、芸能界とその影響は大きい。
日本の新聞記者は警察回りからその人生を始めるというが、ジェイクも例に漏れず。情報源との信頼性を生む反面、持ちつ持たれつの関係性が忖度に繋がる怖さ。実はその成り立ちが事件番から政治番になった時、今の政治腐敗の温床になっている。社会も政治も根幹は一緒。そして表舞台と裏社会の隠れた関係性さえ見えてきてしまう。
ただジェイクの正義感と事件への執着はドラマ同様、文章に表れている。人生の師となる関口刑事や先輩記者たちとの出会いによってその姿が形成されていく。そしてあるルールの下、性的関係も含めて危険な取材も厭わない。そんな中でヘレナとの出会いが彼の正義感に火をつける。だが国や法律の狭間で報道の限界。さらに裏社会の資金源を巡る後藤組長の厚遇とCIAの司法取引が発覚する。
いくつものエピソードに驚いたり、頷いたり。映画ファンなら知るところの伊丹十三さん襲撃事件。映画「ミンボーの女」製作に端を発し、最悪の結末に反社の影。次作が宗教と反社の関係を描こうとしていた事が本著で明かされている。そんな状況が今世間を賑わせている某宗教団体と政治の癒着と重なってくる。
これは決して偶然では無い。権力者が頼るのは力(反社)と金(宗教)という事。金で票を買う論理は投票率の低さが成せる技。だからこそ投票率上げて対抗するしかない。
閑話休題。読み終えるとドラマはあくまで触り。小型ジェット機に乗った戸澤組長の行く先、原作ではその理由が明かされる。一方、今後ドラマで描かれるかは疑問だが、次シーズンは大期待。その顛末はシーズン3くらいまでやらないと描き切れないだろうなぁ。
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