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2022/07/23

「ブレードランナーファイナルカット/4Kマスター版」を観る

今日は午前十時の映画祭で「ブレードランナーファイナルカット/4Kマスター版」を観てきた。オリジナル版公開は1982年。リドリー・スコット監督の手でいくつかのバージョンが生まれたが、今回のものは2007年公開のファイナルカット4Kリマスター版。どのバージョンだろうがいいものはいい。

酸性雨にネオン、スモーク、もちろん自転車?(ブラックレイン)とリドリー・スコットらしい様式美。この作品以降、未来を語るSF映画は判で押したようにディストピア。公開当時の過小評価も時代が追いつき、フィリップ・K・ディック原作は次々と映画化。だが明るいSF、未来描写は「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」位しか記憶にない。

SFで語るハードボイルド、そして人生観。本作以前、ここまで言及したSFはあるまい。特にクライマックス。死に逝くレプリカント、ロイの僅かなセリフとその行動に知ってはいてもルドガー・ハウアーの名演に感極まる。雨と涙が入り混じるデッカード(ハリソン・フォードも若い!)の表情も印象深い。レイチェルとの逃避行の始まりにヴァンゲリスのエンドタイトルはやはり名曲。劇場で聴けて嬉しい。

4Kリマスターながら高解像度は期待できないが、80年代映画特有の程よい銀塩感は伝わる。何より大画面で観る本作のディテール、世界観はデザインしたシド・ミード、具体化したダグラス・トランブルらの特撮チームの賜物。飛び交うスピナーやタイレル本社の外観に圧倒された。

ファイナルカットで目立っていたのはSEの練り直し。スピナーの操縦や街中で僅かながら日本語のナレーションも聞こえてくる。文化の混沌もこの作品のテーマ。80年代、この作品による予見は全世界的に現実のものとなる。続編もそれなりに面白かったが、改めて本作一作で語るに充分と再認識させられた。

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