「流浪の月」を観る
今日は広瀬すず、松坂桃李主演の「流浪の月」を観てきた。本屋大賞受賞という以外、ほぼ情報を入れずに鑑賞。少女時代の誘拐事件の被害者と犯人とされた男性が再会、彼らの人生とその再生を描いていく。
物語は今の社会状況を反映して複雑。だが映画では各々エピソードを短くも丁寧に描き、説明が無くとも行間で十分に伝わってくる。特に誘拐事件とされる件は主人公の更紗(さらさ)に潜む背景、文(ふみ)とのやり取りがその絆を裏付けていく。だが社会はそれを許さない。
感情移入というより共感。現在を広瀬すず、少女期を白鳥玉季が演じているが、物語上15年と時間の経過はあっても、一人の少女として全く違和感が無かった。そんな出会い、更紗の表情が文にとって眩しい存在だったのだろう。それが彼の救いとなると共に苦しめる事になる。
更紗と文の二人、いや皆不器用な登場人物たち。現在の更紗は一見明るくも次々に別の側面が見えてくる。映画では社会の目線、少女趣味を切り口に使っているが、やがて複雑な家庭事情である文の立場から真意では無い事が判ってくる。終盤、苦しみを吐露する姿が痛々しい。
そんな難しいテーマを秘めるが、暗くなり過ぎないのは白鳥ら子役の存在と映画的なアプローチにある。心理面を伝える画作り。時に情緒的、そして美しく心奪われる。赤裸々な描写と吐息まで映画館でないと感じ取る事は難しい。
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