「アメリカン・ユートピア」を観る
アマゾンプライムビデオでデイヴィッド・バーンのブロードウェイショーを収めた「アメリカン・ユートピア」を観た。自身のコンサートをベースに11人編成のライブパフォーマンス、縦横無尽に繰り広げられるステージをスパイク・リーが映画化した。
この作品は目と耳から知的好奇心を刺激する。本当、ダイレクトに詞が届く人が羨ましい。冒頭、デイヴィッドが脳の模型を手に取って言う皮肉。とにかくこの作品は脳を総動員させる。この国(アメリカ)、世界で起きている事。そして身近な出来事、もっと興味を持とうよ...と。
だからといって全てが説教ではなくクール。その最たるは彼らのパフォーマンスと繰り出される音。素晴らしい演奏にマーチングバンドのように一糸乱れぬ隊形を立体的にカメラが追う。色調に留まらないライティングも面白い。「BLIND」で見せる光と影の応酬は「名たんていカゲマン」のよう。
極限まで削ぎ落としたようなコスチューム(懐かし「ストップ・メイキング・センス」デカジャケじゃないがカッコいい)に裸足。多彩なメンバー構成、聴き馴染みある「road to nowhere」まで全21曲、一つ一つがワールドワイドな味わいで届く。終盤気がつけば我が指先がリズムを取っていた。
スパイク・リーとデイヴィッド・バーンの政治志向が重なるのは言うまでもない。曲間、デイヴィッドのMCは観客、そして世界へ送るスパイス。さらに「Hell You Talmbout」はシンプルな楽曲ながらメッセージは力強く、BLMのうねりはけっして途絶えない。エンドクレジットはスパイク・リーらしくかっこいい。
テレビサイズでもパフォーマンスの凄さが伝わるが、これは劇場の大画面と音響で体感したかったと思わせる。劇場公開は日本だけらしく、ピーター・バラカンさん絶賛も頷ける。これを機にデイヴィッド・バーン、トーキング・ヘッズを深堀りしてみようかな。
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