「ゴッドファーザー PARTⅡ4Kリマスター版」を観る
先週に続き、午前十時の映画祭で「ゴッドファーザー PARTⅡ4Kリマスター版」を観てきた。舞台は1950年代、父の後を受けたマイケルがラスベガスへ進出、ファミリーを率いていく姿が描かれる。共闘と裏切り、ボスとして悩むマイケルは「父なら...」と思いを巡らせる一方、物語は20世紀初頭、コルレオーネ村の幼いビトーに遡る。
既に3作通して観てきた身からすれば、このトリロジーはマイケルの物語である事がわかる。だがその物語はシリアスで隙が無い。組織の巨大化と時代が許さないのだ。そこでもう一人のコルレオーネ、ビトーによるファミリー誕生を重ねる事でさり気ないユーモアが生まれる。同時にマーロン・ブランドーを想起させるロバート・デ・ニーロの演技が素晴らしい。ビトーはふとした事から法外な仕事に手を染め街から成りあがっていく。
物語は"PARTⅡ"としながらもパーティーで始まり、そこに客観性を生む事でシリーズとして同じ韻を踏んでいる。まるでドキュメンタリーを観ているよう。その視点が中盤での公聴会での描写に効いてくる。そしてラストも同じ、終止符を打つように死の連鎖が始まっていく。その中にはある人物の姿が...その対比に兄妹が集まる回想シーンが切ない。
やっぱりこの作品の良さはフレドの哀れさよ。マイケルにとって不肖の兄、だが甥にとっては親戚の気のいいおじさん。「こうすると魚が釣れる」とマイケルの息子に気を張る姿。目の下にクマ、ジョン・カザールの表情が悲しい。そして距離を取り始めるマイケルに内心戸惑うトム=ロバート・デュバル。最終章に登場しないのは今思えば当然だったのかも。
組織を守るあまりに涙の訴えの妻ケイを平手打ちの上に蔑ろにする。これを受けるダイアン・キートンの表情とアル・パチーノの迫真の演技。そんなマイケルの悲哀と共に幕を閉じるPARTⅡ。初めて観た時程、心に響かなかったのは次作でその行く末を知っているから。終幕での心情が明かされ、この後待ち受ける因果応報は最悪の結末を迎えてしまう。来週はいよいよ最終章だ。
今回も釘付けの3時間。前作と共にアカデミー作品賞、名作の評価に揺ぎ無し。4Kリマスターの映像もさる事ながら、レストアされた音響(サラウンド感)が素晴らしかった。しかし一つだけ疑問点が。それはキューバを訪れたマイケルがその会合中、純金製の電話を手に取り回覧するのだが、マイケル、ロスを始め、誰からもその重量感を感じなかった事。それは映画のフェイクなのか、劇中のキューバ政府のハッタリなのか、その真偽は判らなかった。

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コメント
調べてみたところ、バティスタ大統領が電話会社から黄金の電話を送られたのは実話を元にしているのですが、実際には金メッキだそうですね(キューバの革命博物館で実物が展示されている)。映画に出てくる電話機も金メッキなのかもしれませんが、そうするとマイケルとハイマン・ロス以外の人たちがいかにも「重いねー」というジェスチャーをしているのが謎です。
(すみません、別のコラムに間違えて投稿してしまいました)
投稿: ebcdic_ascii | 2022/04/10 00:25