「第94回アカデミー賞授賞式」を観る
世間の話題はウィル・スミスの主演男優賞、ではなく彼の平手打ち。アメリカでは賞剥奪、クリス・ロックは訴訟せよと外野が煽る事態。ロシア=ウクライナ侵攻に続き、世界をも巻き込んでいる。
「ベルファスト」のセリフじゃないが、答えが一つなら戦争は起きない。だから今回も論争になる。でもあんな結末ではアメリカンジョークも程度が知れる。これまでも授賞式の中のジョーク、日本人の俺には半分以上笑えないから。
ビンタの話だけが目立ってしまったが、今回の授賞式放送に大きな変化が起きた。"ある趣向"とは長期間放送を嫌い、局側がアカデミーと了承の上、一部の表彰を事前に行って編集扱いした事だ。これまでは基本生放送。WOWOWの字幕放送でもどんな部門の受賞でも生の緊張感に溢れ、それが好きだった。
だが今回は作品賞、主演助演、監督賞等を除いてノミネート紹介から受賞スピーチまであっさり。嫌な既成事実を作ってしまった。何より米アカデミー賞にとってどの部門も平等に扱う事こそ重要だったのに。ただ人を傷つけるだけのジョークが挟まれる位なら、むしろそちらを配慮すべき。
作品賞は「コーダ あいのうた」。理由に「減点法だから」という意見も、今のアメリカを表すのは米アカデミー賞。彼らの求めるものは家族への回帰かもしれない。この作品は手話コミニケーションが先に立つが、家族を描いた事が素晴らしい。それに観て感動した作品が評価された事が最も嬉しい。
主演、助演賞受賞のスピーチはいつもながら惹きつけられる。ジョークを交えるトロイ・コッツァーの手話スピーチ、感謝とアイデンティティーを感じるジェシカ・チャスティンとアリアナ・デボーズ、もちろんウィル・スミスも切り取られたネット記事より、あの瞬間の経緯や心境を交えたスピーチからその気持が伝わってくる。
日本人として国際長編映画賞「ドライブ・マイ・カー」の受賞は吉報。感謝と我を出した濱口 竜介監督のスピーチ。世界映像にキャストたちの名前が流れたのは感慨深い。また授賞式を楽しんでいる西島秀俊たちの映像も垣間見えた。追悼のコーナーで千葉真一さんの紹介があったのはハリウッドでの影響力の賜物。このコーナーも米アカデミー賞授賞式の良心で好きなところ。ちょっと演出が雑だったけど。
「007」や「ゴッドファーザー」がフィーチャーされたところも良かったけど、「ゴッドファーザー」の今風BGMはいただけない。「パルプ・フィクション」は公開から28年も経ったのか。あの3人がステージに立って盛り上げる。また「パルプ・フィクション」を劇場で観たいな。午前十時の映画祭でやってくれないかな。(おしまい)

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