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2021/11/14

「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」を観る

WOWOWで放送された「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」を観た。実は現在も劇場公開中。8月、緊急事態宣言が無ければ観に行くつもりだった。ただ近場での公開はその時のみ。先週の「Barakan Beat」でピーターさんが今夜WOWOWでやるよと教えてくれた。この好機は逃せない。

1969年、ウッドストック・フェスティバルと同じ頃、開催されていたのがハーレム・カルチュラル・フェスティバル。前者が時代の変革を表すなら、こちらは時の黒人差別や格差差別等を反映した音楽フェス。だが映像として収められるも「ウッドストック」のように公開されず、イベントの存在と共に地下に眠っていたという。それを音楽ドキュメンタリーとして復活させた作品である。

キング牧師やケネディ兄弟が暗殺され、しかも差別と格差が収まらない時代。黒人音楽、文化を中心にムーヴメントを担うイベントとして企画された。ただ少なからず化する社会のガス抜きの意味も少なからずあったと思う。コロナで無ければ、BLM以降の今似たイベントがあってもおかしくない。本作の復活はその代替と言えるのではないか。

このフェスは黒人アーティストが中心。スティーヴィー・ワンダー、BBキング他多数、そしてニーナ・シモン。とにかく皆若い。BBキングは晩年の恰幅の良さは無いが、プレイぶりは変わらない。パフォーマンスは様々。ポップなコーラスグループ、フィフス・ディメンションに白人メンバーを含むスライ&ザ・ファミリー・ストーンと音楽だけでなく人種の多様性も垣間見える。

そんな彼らのパフォーマンスに観衆は一喜一憂。当時観客だった人々や関係者のインタビューが挿入され、当時を振り返る。一つのムーヴメントを知る上でこの構成はアリだと思う。ましてBLM以降のアメリカだからこそ。またパフォーマンスだけを収めたヴァージョンも観てみたい。

この作品を観て思うのは単なる音楽映画を超え、常に我々は社会、国、政治を見ているんだぞという気概。アメリカの成り立ちからすれば、人々に人種差別や一部の既得権益、搾取者との対峙がDNAレベルで刷り込まれている。それによって均衡が保たれているから今のアメリカがある。そんなアメリカを長い物には簡単に巻かれてしまう日本人から見て羨ましい。でも本当に観てよかった作品だ。

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