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2021/11/01

「未来世紀ブラジル」を観る

午前十時の映画祭で「未来世紀ブラジル」を観てきた。1985年公開、テリー・ギリアム監督作品。20世紀の何処かの国を舞台に、情報省に勤める主人公サムが夢に見た女性のために奮闘する姿を描く。

冒頭、聴き覚えのある曲「Brazil」が原題でもある映画。のどかな曲に乗せた彼の夢、大空を羽ばたく姿は鬱屈な社会の反動に見えてくる。物語の顛末は何となく想像できたが、その失われた境界線がギリアムのビジュアルで展開されていく。ラストシーンの舞台はつい「X-MEN」を思い出してしまった。

それだけでなくその後の作品への影響が垣間見える。例えば市街のカーチェイスなんてまるで「エイリアン2」だし、俯瞰の都市群は「バットマン」で観た箱庭感覚。時にシニカル、ちょっとだけシリアス。それら世界観をギリアムによるコントで繋いでいく。

それにしてもギリアムの作ったレトロ未来は面白い。タイプライターに凸レンズを使ったディスプレイが印象的。当時、映画雑誌に掲載された主人公の顔がアップとなる写真を思い出した。加えて全体主義を意識した美術、コスチューム。さらにドイツ、メッサーシュミットの小型車を扱うところは世界観に対し暗喩的でもある。

エンドロールまで来て初めて主人公がジョナサン・プライスと気がついた。テリー・ギリアム色にデニーロが出た映画として認知していたが、プライスは社会とヒロインに翻弄される主人公をコミカルに演じていた。デニーロの役回りは独特。果たしてどこまでが目の前の現実なのか。

常に夢と現実がせめぎ合う本編。我々の住む世界はそこへ向かって片足、いや一歩踏み出しているのかも。管理社会と情報統制。テリー・ギリアムによる30年以上前の警鐘は映画ならでは。この世界観が現実なものとならない事を祈りたい。

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