「最後の決闘裁判」を観る
今日はリドリー・スコット監督作品「最後の決闘裁判」を観てきた。14世紀フランスを舞台にした実話に基づく歴史劇。騎士の称号を得た男が妻を親友に強姦され、国王に直訴するも妻の思いに反し決闘を強いられる事になる。だがその背景には妻が知る事実が隠されていた。
上映2時間半超ながら見応えあるリドリー・スコット久々の力作。黒澤明『羅生門』スタイルを用い真実に辿り着くストーリーテリングは巧妙。ベン・アフレック、マット・デイモンら(出演、共同脚本)の力を得て、静と動を織り交ぜ見事な歴史劇に仕上げた。
物語は決闘のタイトル通りの血生臭い剣劇ではなく、あくまで妻マルグリットを巡る中世後期を舞台にした「真実の行方」。この作品を観て600年経っても人の進歩は無いと思い知らされる。スキャンダルへの好奇心、目の前で繰り広げる闘争に血を激らせる。拳を振りかざすカルージュと熱狂する民に選挙特番の映像が重なって見えた。
閑話休題。もう一つのテーマは女性蔑視。こちらも半歩進んだか、いや何も進んじゃいないだろう。女性にとって目を覆う描写もあるが、テーマを推し進める上で外す事はできまい。決闘の顛末にその後のマルグリットの表情が本作唯一の救い。歴史上、彼女の行動が初めの一歩といえる。
無骨なカルージュ、知略のル・グリと対照的。マット・デイモンの重厚な騎士ぶりもさることながら、アダム・ドライバーの演技も良かった。二人が相見えるクライマックスは映像派リドリー・スコットの独壇場。その行方に手に汗握る。加えてまさに中世の男を体現するベン・アフレックの愚か者ぶりも見もの。
ハリー・グレッグソン=ウィリアムズによる音楽は派手さは無いが情緒的で素晴らしかった。万人受けする題材ではないが、観て損は無しの作品だ。
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