「シカゴ7裁判」を観る
Netflix独占配信の映画「シカゴ7裁判」を観た。原題は「The Trial of the Chicago 7」。エディ・レッドメイン主演、1968年に起こった実在の裁判を描いた群像劇。
ベトナム戦争当時のアメリカ。反戦運動等を組織する8人が起訴された。彼らが参加者を扇動した共謀罪に問われたからだ。だが彼らはそれぞれ3つの異なる組織に属し接点は少ない。そこにはニクソン政権下の司法省の目論見がはらんでいた。
冒頭、畳み込むような演出も物語の全容は見えない。シリアス、ユーモラスが入り混じった8人。彼らを弁護するクンスラー。起死回生の証人招致を行うが保守派の裁判長がそれを許さない。不利な立場に見えない壁が次々立ちはだかる。
徐々に明らかになる事件の背景。その証言者に驚かされるもそれがアメリカ。そんな中、マイケル・キートン演じるある人物の登場で物語はグッと締まったものになる。
ただ一人弁護士を付けず戦うブラックパンサー党のシール。暴動当時に4時間滞在しただけの彼を逮捕、起訴したのは弾圧の一環。裁判における理不尽な進行は当時のアメリカを表す。ただ残念ながら言論弾圧と暴力の構図は今も大きく変わっていない。
物語はレッドメイン演じるトム・ヘイデンによる陳述、司法への抵抗をもって終わっていく。彼の主張は最初から最後まで変わらない。協調する者に場を立ち去る者、そこにアメリカらしさがある。だが同時に司法の権力への忖度、そんな日本の現状に不安を抱く。まさに自由と権利を考えさせられる一作である。
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