「AI崩壊」を観る
今日はアマプラで大沢たかお主演「AI崩壊」を観た。「22年目の告白 -私が殺人犯です-」入江悠監督によるSFパニック作。2030年、AIが社会生活を管理する日本を舞台に開発者とAIを悪用しようとする者との戦いを描く。
科学者の桐生は医療AIを開発したものの、国の認可が取れず、病の妻を亡くしてしまう。それから10年。医療AIは妻の名「のぞみ」と付けられ、義弟である西村の手を経て国内に普及。医療に限らず、社会の中で利用されるようになっていた。そんな偉業から総理から表彰を受けるため、娘と帰国する桐生。だがそんな日「のぞみ」の挙動に異常が現れ始める。
リメイクながら緻密に作られた「22年目の告白 -私が殺人犯です-」 のような作品を期待したが、本作は結構大味。NHKのドキュメントドラマ風にとって付けたヒューマニズム。国民が次々と倒れていく中、主人公の動機として充分なのに娘の命も晒される。命の選別で「のぞみ」との関係を絡めたかったのだろうが、あからさま過ぎて覚めてしまう。
人工知能を描いた作品に「ターミネーター」や「2001年宇宙の旅」と偉大な先人がいる。SFという枠でリアリティーを追求。結果としてヒューマニズムが付いてくる。そのくらいが面白い。この作品でも所々超科学が出てくるが、無理がある。劇中、自動運転できる車はテスラ1台だし、社会がAIに依存しててもテレビは普通に放送できてるし。
AIに依存する社会と言いつつ、明かされる地方格差。そこがキモになっているが、おかげで「宇宙戦艦ヤマト」並みに帰り道は速い。この時、管理社会を逆手にとる一手を繰り出すが、手垢の付いたプロット。この作品に何か新しいと感じるものが欲しかった。
黒幕は何となく判るし、物語に意外性が無いのもマイナス。ただ道具を悪用する社会風刺だけは評価したい。それでもSFでない「新聞記者」に負けてる。あっちのほうが底知れない、身近な怖さがある。そう、この作品に本当に足らないものは観客に訴える怖さだと思う。
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