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2021/05/02

「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」を観る

アマプラで独占配信されている「サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~」を字幕版で観た。過去、オスカー絡みのAmazon Movieは「マンチェスター・バイ・ザ・シー」があるが、本作も6部門がノミネート。タイトルにちなんだ音響賞に加え、脚本賞も獲得している。

メタルバンドのドラマー、ルーベンは突然に聴覚を失ってしまう。自暴自棄になるルーベン。ボーカルでガールフレンドのルーはそんな彼を聴覚障害者の自助グループに連れていく事に。面会したのはリーダーのジョー。ジョーはルーベンがかつて薬物依存であった事を聞き出す。そして外界を断ち切り、音のないルーベンの生活が始まった。

この作品に興味は持ったのは、小さい頃から健常者の幼馴染みが手話で聴覚障害者の両親と話す姿を見てきたから。もちろん本作のルーベンと立場こそ違え、コミュニケーションの難しさは痛感してきた。コミュニティーの違いは互いの理解で成り立つが、ルーベンを通しその難しさを擬似体験させる。

ルーベンの気持ちは痛い程に分かる。五感の一つを失う事、まして成功に手が届いた仕事の糧の喪失感は想像にし難い。ジョーがかつての依存を察知して、ルーベンをろう学校の子供たちに近づける。孤独に苛まれる中、一人の子供とのコミュニケーションがルーベンの心、無音の世界を開いていく。

ただこの映画の素晴らしいのはそこで終わらない事だ。ルーベンがルーとの関係にとらわれ、大きな決断をしていく。タイトルはその点で意味深い。エピローグ、ルーベン=リズ・アーメッドの表情は大きな山を超えた感が伝わってくる。決してハッピーエンドと言い難いが、ルーベンの成長が垣間見えてくる。

そんな物語もさることながら、オスカー授賞通りに音響が素晴らしい。この映画、配信スタイルからもヘッドホンでの視聴を薦める。冒頭の生活感、対比するようなその後の生活音の違い。そして物語が結に向かう中、ルーベンの決断に至る葛藤、そこを含めた感覚は言葉にし難い。それを伝える事、映画というものの素晴らしいところだと思う。

20210502-91125

 

 

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