「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」を観る
WOWOWで録ってあった「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」を観た。90年代、韓国から北朝鮮へスパイ活動していた男。その実話を基に描くポリティカルサスペンス。
1992年、北朝鮮の核問題で世界的緊張が高まっていた。軍の将校パクは国家企画安全部の命を受け、全てを捨てスパイとなった。目的は北の核開発情報を得る事。民間人となり、貿易商として北朝鮮関係者に近づくパク。やがて金正日と直接パイプを持つリ対外経済委員会所長と会う機会を得る。
まさに韓国版インファナルアフェア。アクション無き国家間の攻防戦。だがその末路は国のエゴに翻弄されてしまう。メガネにコート姿のパクはまるで「孤独のグルメ」の五郎さん=松重豊のよう。笑みを浮かべつつ冷静に分析、事を運んでいく。そして金正日との謁見。その緊張感は画面を通しビンビン伝わってくる。
全体の緊張感を支えるのは、パクを演じるファン・ジョンミンの巧さ。そして北朝鮮を模したロケ。ピョンヤン入りしてからの風景は本物(に思えてしまうほど)。謁見をコーディネートしたリ所長。そしてパクとの関係性は彼らの顛末、国を思う気持、東西分断への希望を含めて反映されているのだと思う。
時の権力者、国に翻弄される組織は世界を問わず。選挙のためなら隣国との裏取引、国際紛争も辞さない。「ハウス・オブ・カード」のような話が実際行われていた。ここ数年の日本も同じなんだろう。ただ韓国のような検察による摘発、自浄作用は見られないようで悲しい。
映画として際立つリアリティー。やたら女性関係を持つハリウッド産スパイ映画と一線を画す。確かに最後の部分はフィクションだろうが、そんな事は気にならず。将軍様以外の主要人物に何かしらの感情移入をしてしまう。間違いなくサスペンス映画の傑作。
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