「ストックホルム・ケース」を観る
今日は劇場でイーサン・ホーク主演「ストックホルム・ケース」を観てきた。映画ファンならよくご存知の「ストックホルム症候群」を扱った実話。
1973年スウェーデン、ストックホルム。強盗犯によって襲撃されたクレジット銀行。人質を残し、三つの要求を出す犯人の男。その一つが服役中のガンナーを釈放させる事だった。ガンナー合流の後、逃亡を模索する男。その男の人質となったビアンカだったが、やがて何かしらの共感が芽生えていく。
これまで「ストックホルム症候群」は色んな映画で取り扱われているが、今起これば交渉人との丁々発止のサスペンス。やはり70年代のおおらかさがあってのものだと思う。しかもビアンカ同様、物語の終わる頃には主人公ラースに共感してしまう。観客も「ストックホルム症候群」になっている事に気づかされるのだ。
その点でラースを演じるイーサン・ホークが魅力的に映る。キャリアは十分にベテランの域。今やニック・ノルティのような無骨さ、男らしさを兼ね備える。口ひげが如何にも70年代らしい。ボブ・ディランを愛し、その言動にビアンカで無くとも心を動かされるだろう。
ビアンカを演じたノオミ・ラパスも70年代のキャリアウーマンを体現。メガネ姿が色っぽい。ビアンカの家族間の物語は核心に触れないが、何となく見えてくる。だからこそ(真実はどうあれ)ラースとの交流に身を委ねたのだろう。ラストシーンに大人の甘酸っぱさを感じる。
冒頭に加え、小道具や音楽も70年代映画の雰囲気を残す。ハイテク戦ばかりの新作よりも人間味あふれるこの作品が好きだ。まるで舞台劇。描き過ぎず観客に行間を委ねる92分はあっという間だった。今年観た新作映画の中では屈指の出来、オススメの作品である。
| 固定リンク
コメント