「ミッドナイトスワン」を観る
今夜は劇場で「ミッドナイトスワン」を観てきた。新しい地図 草彅剛主演のヒューマンドラマ。
ショーパブで働くトランスジェンダーの凪沙に故郷から親類の娘、育児放棄された一果を引き取って欲しいと電話が入る。故郷に今の素性を隠した凪沙はやって来た一果を冷たく扱った。そんな一果だったが、バレー教室が目に留まり才能を花開かせる。そして凪沙は一果にある感情が芽生えるのだった。
本作の冒頭、勝手ながら「その男、凶暴につき」のような肌触りを感じた。もちろん本作とはテーマが違う。しかし身体的な痛みとそのリアルさは共通点。実母からの暴力、一果がそれを消そうとする行為も痛々しい。しかも物語全般、登場人物たちの心の痛みまで伝わってくる。それこそ本作の魅力だろう。
その魅力を体現する草彅剛の存在感。見た目スマスマの頃を思わせるが、年を経ていい俳優となった。本当に難しい役柄を自然に演じている。一果に心を通わせる前と後の表情、仕草が伝わる。一果を演じる服部樹咲のフレッシュさもいい。
だから凪沙は中年に差し掛かる女性として母性が芽生えるのは必然。しかしルックス、肉体がそれを許さない。予てからの違和感、やがて彼女はある決断を図る。それを手にした後、立ち向かう姿。その末路が悲しい。終盤、海を見つめる凪沙と一果を観て、再び勝手に北野映画の風情を感じた。
そして常に女性目線で描かれる映画だから、女性のほうが共感が高いと思う。でも男から見ても親目線で心の動き、行動も理解できる。シーンや描写が過ぎる点もあるが、映画としての完成度が高く気にならない。難しい背景だが、大人向けの作品として広く観て欲しい。
追伸.
エンドロールで田口トモロヲの名も何処で出ていたか気がつかず。物語に溶け込む怪優ぶりを発揮。あの洋子ママだったのだ。
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