WOWOWで「凪待ち」を観る
WOWOWで録ってあった白石和彌監督、香取慎吾主演「凪待ち」を観た。ギャンブル依存症の男が受ける偏見、ある事件を経た主人公と家族の再生を描いた人間ドラマ。
リストラされた郁男は同居する亜弓の故郷、宮城県石巻市へ移り住む事となった。隣人の小野寺の計らいで地元の印刷所に就職する郁男。そんな昼休み、競輪に賭する同僚たち。彼らは非合法のノミ行為に興じていたのだ。郁男は臆する事なく競輪に興じ始める。
主人公の朴訥さ、言葉少なに生きるもギャンブルの泥沼にハマっていく。この作品、器用に生きる人間は一人も出てこない。主人公たちに共感できない人もいるだろう。でもオレには主人公の不器用さがやるせない。まるで石巻を舞台にした「マンチェスター・バイ・ザ・シー」だ。
郁男を演じる香取慎吾が凄く良かった。ある作品で背伸びしたその役にイマイチと思った事があったが、本作は違う。等身大で苦悩と立ち向かう。そしてだらしないところも。解っていても、負けてしまうのが人間。愛する人の声は聞こえない。やがて悲劇が、疫病神と悲観するまでに墜ちてしまう。
本作は漢の映画ではあるものの、男臭さはなく静かに力強い。群像劇らしく小さな役まで存在感が光る。中でも亜弓の父勝美の懐の深さ、船上で本作唯一の前向きなセリフが郁男の心を開く。作品内で勝美と軍司のバックストーリーは語られない。だが彼らの関係が効いて、物語は終局に向かっていく。
ノミ屋の窓口係が「当たりますように」なんて言って可笑しかった。宝くじ売り場じゃないんだから。競馬場の口頭窓口でも言われた事ないよ。ギャンブル全般に言える事だが、合法でやりましょう。あと身の丈にあった買い方をしましょうね。
石巻、地元言葉が聞き取り難いがそれも味。それにしても白石和彌監督の作品にハズレ無し。そして芸能界はSMAPのメンバーをもっと大事にすべき。慎吾ちゃんも吾郎ちゃんも剛くんもそれぞれ本当にいい映画に出てるんだよ。そんな思いを感じた一作でした。
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