「仁義なき戦い」を観る
今日は盟友N氏と劇場で「仁義なき戦い」を観てきた。徐々に映画館は新作公開にシフトしつつあるが、まだまだ弾(タマ)は足らない。そんな時劇場で「仁義なき戦い」が観られるとは。この機会、弾(タマ)は逃せない。
第二次大戦終戦直後の広島呉。広能昌三はいざこざの中、闇市で力を伸ばす山守たちと出会う。そして山守たちに代わり、暴漢を射殺。刑務所に収監された。出所後、広能はさらに勢力を増した山守たちに迎い入れられるも、長老の大久保、勢力を分ける土居との仁義なき戦いに巻き込まれていく。
言わずと知れた東映最強のプログラムピクチャー。飯干晃一原作、実録任侠物としてシリーズ化され、第五作まで作られた。個人的にはこれまで輸入DVD (安価だから)で観たり、東映チャンネルの集中放送を録ったりの作品でもある。
画面を通して感じる凄まじいエネルギー。深作欣二の演出に手持ちカメラの揺れは持ち味。シネスコ画面一杯に立ち尽くす菅原文太がカッコいい。土居暗殺直前、売女を抱く広能。そしてラストシーン、葬儀で銃を放った後に放つ名セリフ。最初から最後まで名シーンの連続。練りに練られた笠原和夫脚本の素晴らしさ。
それに限らず個性豊かなキャスト。梅宮辰夫、松方弘樹、渡瀬恒彦、田中邦衛、川地民夫にもちろん金子信雄。山守演じる金子のタヌキぶりは最終作まで続いていく。さらに川谷拓三や先日亡くなった志賀勝等、演者一人一人が見逃せない東映オールスター。彼らの一挙手一投足、表情を捉えるからこそ大画面が活きてくる。
個人的に印象的なのが、坂井暗殺のシーン。動、バイオレンスがメインの本作で、背景が玩具屋というコントラスト。襲われる坂井に心の中とは。直前、車中で坂井を予言する広能のセリフも心に残る。
もちろん忘れてならないのが、津島利章の音楽。メインテーマに限らず、血湧き肉躍る映像との相乗効果。「仁義なき戦い」を名作とする大きな理由でもある。
余談だが、原爆のスチルで始まる本作。エンドロール前、対照的に原爆のスチルで終わる「太陽を盗んだ男」。どちらも好きな作品だが、原爆や戦争を最大の暴力として扱うのは両作共通のアイデンティティーなのだろう。
最近の邦画は綺麗過ぎ、洗練され過ぎ、企画はボーイミーツガールばかり。それと比べて「仁義なき戦い」は対照的だ。バイオレンスである意味雑で荒削り。しかしこの疾走感は何事にも代えがたい。先日観た「マッドマックス2」にも共通する時代を超えた迫力。本当に劇場で観て良かった。最後に邦画に一喝...
「山守さん 弾(タマ)はまだ残っとるがよう」
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