「半世界」を観る
今日も巣篭もり生活。WOWOWで録ってあった「半世界」を観た。「新しい地図」の稲垣吾郎主演、「どついたるねん」の阪本順治監督作品。アラフォー世代の同級生3人の不器用に生きるも、支え合う様を描いた人間ドラマ。
備長炭職人の紘、車修理工場で働く光彦の住む町に同級生の瑛介が帰ってきた。高校卒業と共に自衛隊に入隊した瑛介との8年ぶりの再会。話に花を咲かせる二人に対照的な瑛介。紘は瑛介を備長炭作りの手伝いへ駆り出す。だが紘は仕事、家庭も決して楽な状況では無かった。
主人公たちの不器用さを見ていると映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」を思い出す。人生とは常に順風満帆と言い難い。そんな中での3人の関係性がリアル。稲垣(もう吾郎ちゃんとは呼べません)演じる紘の仕事ぶりと反するちょっとした不器用さ。いじめに遭う息子、そんな紘を知りつつ支える妻。
そうして少しずつ関係性、人間性を取り戻す瑛介。そんな二人と光彦が海辺で昔を語り合う姿が印象的。瑛介が紘の息子や光彦の工場を助けに入るエピソード、そして町に戻ってきた理由が見えてくる。瑛介を演じる長谷川博己はキレの良さといい、見事ハマっていた。
そんな物語を石橋蓮司、小野武彦とベテラン勢が時に笑わせ、要所を締める。特筆は紘の妻を演じる池脇千鶴。漂う生活感がリアル。池脇の存在感あって稲垣の好演も際立っていた。また光彦を演じる渋川清彦も絶妙。物語を陽に引っ張りつつ、物語が大きな転機を迎える時、その表情に引き込まれた。
阪本監督(兼脚本)は男臭いドラマだけでなく、このような群像劇でも手腕が光る。この後味、ハッピーエンドにとらわれない、だが僅かな光明があるから人は生きられるのだと思わせる。
本作を紡ぐ様々なリアリティの中でも音が素晴らしい。例えば窯の中、炭作りの醸す水分の弾ける音。音がいいスピーカーで見て欲しい作品でもある。
P.S.
大好きな「充電させてもらえませんか」に新しい地図の3人が出演した回。伊勢を目指す旅でロケ地、本作の自動車工場が登場。劇中の看板共々「そうそう、これ」と思い出された。
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