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2019/08/30

「止められるか、俺たちを」を観る

WOWOWで録ってあった白石和彌監督作「止められるか、俺たちを」を観た。あるきっかけで映画の世界に身を投じた女性の目を通し、若き日の若松孝二監督、そしてその仲間たちとの日々を描いている。登場人物は実名であり、映画ファンなら知った名前も多く興味深い。

ガイラこと秋山道男の誘いで若松プロに入っためぐみ。若松の言動に振り回されるも、スタッフとして少しずつ力を付けていく。一方、カンヌからパレスチナを訪れた若松と足立正生は感銘を受け、収めた映像を上映するバスツアーを思い立つ。だが、めぐみには映画製作の狭間、心身ともに限界に達しようとしていた。

この作品を観終えて、まず何で映画館で観なかったか後悔。本作をより没入して観る事ができたろう。白石監督の時代性を大事にする演出は健在。しかも実話である。現在の閉塞感と対比して、誰もが熱く自分を語れた時代。インサートされる若松作品、その撮影風景を再現した中、底知れぬ力強さを感じる。

まずヒロインめぐみを演じる門脇麦が素晴らしい。ルックスも表情も現代向きの洗練され無さが逆に魅力的。昭和、特にこの作品の時代を体現している。時に情熱的でかつ、枯れた感じの演技が深い。そして彼女の末路、その現実に遭った仲間たちの姿が悲しい。

生前を知る人からのヒアリングで作った井浦新の若松孝二像も面白い。テレビドラマでの彼とは真逆の演技に驚かされた。若松孝二ってそういう人なんだろうなと納得させる力がある。

あえて説明的な描写は省いているから、時代背景や人間関係は掴み難いかもしれない。鑑賞後に公式HPを観る事をオススメする。そして彼らが演じた人たちが誰だったかにまた驚かされる。群像劇としてのぶつかり合いも面白い。特撮ファンが感涙するようなやり取りも出てくる。なおエンドロール、キャスト中に白石監督の名でまた驚いた。テレビサイズだと気が付かないんだよ。

特に時代背景は今の何処か統制された世の中と違う。知るにつけ羨ましくもあり、彼らの方向性はまだしも今だからこの作品を作った意義も感じる。この映画のテーマは一つの時代を作った原動力なのだと思う。現代に一石を投じるような熱い作品だ。

190830  

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