「高い城の男 シーズン3(吹替版)」を観る
配信になったばかりのリドリー・スコット制作総指揮、Amazon studioの「高い城の男 シーズン3(吹替版)」をAmazonプライムで観た。ご存知フィリップ・K・ディック原作。このシリーズはその枠を超え、シーズン2から完全オリジナルとなった戦後ifである。
枢軸国が勝利した第二次大戦後、一触即発の事態を回避したナチスと日本。だがナチスは石油禁輸し、日本を苦しめる。さらにナチスは本国の権力争いの最中、アメリカ人をナチス国民化するイヤーワン、もう一つある目的のためにニーベンベルトを計画していた。田上はジュリアナからニーベンベルト計画を聞かされ、阻止のために彼女を解放。ジュリアナらは計画のカギとなるワッカワナ鉱山へ向かうのだった。
シーズン3も面白い。だが1、2に比べるとやや盛り上がりに欠ける感が強い。理由は二つ。
(1) シーズン2で田上が見て来た世界が本シリーズで明確化されてしまった。
(2) 前シーズンに比べ緊迫感ある展開が無かった。
(1)での明確化こそ、シーズン3の本筋なのだが、それこそ超科学。ただナチスはUFOを開発していた(By ディスカバリーチャンネルの受け売り)程だから、その先に可能性はあるようで無いようで。それに本シーズン第2話であるキーパーソンの末路の表現が何とも。これ以上はネタバレになるために書けないけど。
(2)として内面の葛藤が挙げられる。つらさの一端だろうが、特にスミス夫妻は長男の件から関係がおかしくなる。その一方でLGBTを扱う等、我々の現代社会を反映したという事か。ただ残念ながら物語のダイナミズムに寄与したと言い難い。
ただ相変わらず本作最大の魅力である戦後if、歴史ifを表現する圧倒的なビジュアルは説得力があり、次シーズンも期待させる。街を走る日本製オールドカーに見惚れてしまった。
キャラクターでは木戸警部が気になる。かつての日系人収容所に立ち、敬意と理解を持ちつつ、職務を執行する。その姿に心を動かされた。
考え方によってはシーズン3は嵐の前の静けさと取る事ができる。きっとシーズン4はその期待に応えてくれるだろう。ただ一抹の不安があるとすれば、制作総指揮リドリー・スコットが「エイリアン」シリーズで風呂敷を畳めなくなった、同じ轍を踏まなければ良いのだが。
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