「スリー・ビルボード」を観る
今日は今年のオスカー作品賞候補の一つ、「スリー・ビルボード」を観てきた。「ファーゴ」でオスカーを受賞したベテラン、フランシス・マクドーマンドが主演。ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、個性派ピーター・ディンクレイジらが顔を揃える。
原題「THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI」。舞台はミズーリ州の田舎町エビング。ミルドレッドはその外れ、道沿いにある広告掲示板と契約する。その目的とは7ヶ月前に強姦殺害された娘に関するものであった。だが片田舎ゆえ、彼女の行動は物議を醸していく。
初見、サスペンスと思しき内容だが、実際は事件に翻弄される人々を描いた群像劇である。ゆえに単純に結果を求める作品では無い。その点で玄人向きな作品。引き起こされるエピソードによる人々の変化が見どころ。
盤石なフランシス・マクドーマンド、味のあるハレルソン。だが中でもサム・ロックウェル演じるディクソンの動向、特に後半における変化が興味深い。そしてミルドレッド、ウィロビー、ディクソンの顛末、エンディングのセリフが何とも想像力を誘う。
また片田舎という舞台背景に人間関係の特殊性も描かれる。ツイン・ピークスにも通じた趣き。加えて家族間の問題、南部における人種の爪痕等、現代アメリカの抱える悩みが垣間見えてくる。
もし本作にテーマを与えるなら後悔と意地かと思う。ミルドレッド、ウィロビー、ディクソン立場は違えど、彼らはそのテーマに沿い行動に移している。やがて三人の起こす化学反応が各々の行動を変えていく。派手さは無いが、心理面まで丁寧に描かれた佳作だ。
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