「東京難民」を観る
今日は日本映画専門チャンネルで録ってあった「東京難民」を観た。暮れに観るには世知辛い作品。学費未納のために大学を追われた主人公が、ネットカフェ難民や日雇い労働に身を落とし、社会のどん底を歩んでいく。そしてそこで見つけたものは何か。
若者が身を落とす過程は北野武監督の「キッズ・リターン」を思い出させるが、こちらは笑いのオブラートが無く、よりリアル感が漂う。蓄えの無い主人公が行き当たりばったりの人生を送る中、煙草だけは手放さないのも妙にリアル。同じ境遇の人々が集まり、その痛みを噛みしめる。社会を作るのは所詮、金のある人間たち。自分たちの苦しめるシステムは作らない。そんな彼らの言葉から痛感させられる。
そして主人公が落ちるシステムが悲しい。巻き込まれるヒロイン茜の行く末。やがて二人が再会する時、溢れる言葉に何か熱いものを感じる。
主人公を演じる中村蒼、奇をてらったテレビドラマでの役とは違った演技。茜を演じる大塚千弘が文字通り体当たりで臨む。この作品の魅力は彼らの関わる人々、脇役の充実ぶり。特に日雇い労働者の小市慢太郎、そしてホームレスに井上順を配し、彼らの優しさが主人公の人生に一筋の光を当てていく。
群像劇、人間ドラマに定評がある佐々部清監督らしい手堅い演出。2時間を超える作品だが、最後まで見せる。人生に挫折した時、光を見出せるか。人生終わっちゃいないと感じられるか。エンディング、ささやかな旅立ちに高橋優の主題歌が重なる佳作だ。
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